1961 年 18 巻 200 号 p. 740-746
ポリアクリロニトリル凝固糸状体の100℃における熱延伸性と, 得られた繊維の物性の関連性について論じた。繊維は, 70%硝酸に重合体を溶解し, 36%希薄硝酸水溶液中に押出して凝固し, 水洗して得られた凝固糸状体を, 100℃熱水中で熱延伸することによってつくられた。X線測定によって求められた繊維中の結晶化度および結晶の大きさは, 試料の平均分子量および熱延伸倍率によってほとんど影響を受けないが, 結晶配向度は同一熱延伸倍率では低分子量試料のものほど良好である。また, 同一結晶配向度を持つ繊維の引張強度は, 分子量の増加とともに急速に大きくなる。しかしながら, 高分子量分子鎖によって構成された凝固糸状体からは, 100℃では十分な配向度をもつ繊維を得ることができなかった。これらの現象は分子論的取扱によってよく説明できる。