1962 年 19 巻 205 号 p. 285-292
結晶性高分子物質の結晶領域の分子鎖方向の弾性率 (E) を、X線的に測定する目的のもとに装置を試作した. 高度の配向を与えたフィラメントあるいは繊維を延伸器に取りつけ, これをX線ディフラクトメーターに装着し, 滑車と分銅により試料を一定荷重下に保ちながら, 応力による頂面の反射角の変化を測定した。次に簡単な直列モデルから結晶領域における応力を計算し, これと頂面の面間隔の増大とから結晶格子の応力ー伸び図を作製し, 石を求めた、まず結晶中で分子鎖が完全に引き伸ばされた構造をとるボリエチレン (PE) およびポリビニルアルコール (PVA) を試料として測定し, 次の結果を得た.
これらの実測値を他の著者の示した値と比較した。P£とPVAとで, ほぼ一致するEの値が示されたことは, 結晶における分子鎖間のカの効果が, 鎖の方向の結晶の弾性に大きく影響しないことを示すものと考えられる.