抄録
塩化ビニル (VC) とアクリロニトリル (AN) との共重合を主に+5, -15および一30℃で研究し, 組成のかなり均一な共重合物を得てこれらの物性を調べた。第2報以下に述べるVCを主とする各種の共重合物とは異なりこのVC-AN共重合物のみが同一重合温度によるPVCよりも熱収縮率が低かった。共重合物の溶解性はAN含有率の増加に伴って大となり, 20重量%以上では低温PVCの不良溶媒たるアセトンにも溶解する。上記の特性は極性の高いANモノマー単位の特性によるものと解されるのであって, 極性の高いANモノマー単位はVCのシクエンスを乱して非晶領域を広げて分子鎖の可動性を増加する効果よりも, かえって分子鎖間吸引力の中心となり, 鎖間凝集力を増加する効果を強く発揮するのであろう。