高分子化學
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アクリル維繊の配向に関する研究
第1報各種の方法で測定した配向関数
筒井 延宏早原 琢朗松村 康夫関口 英人
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1966 年 23 巻 252 号 p. 193-199

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抄録
アクリロニトリル (AN)-アクリル酸メチル (MA) 共重合体繊維の配向関数F= (3<cos2θ>-1)/2を求める式を導いた。ただしθ は分子主鎖と繊維軸とのなす角である。
X線回折 FX=1-H/180° H: 半価幅
CR (コンゴーレッド) 二色性 FCRCR (D-1)/(D+2) ξCR=1.12
CN (C=N基) 二色性 FCNCN (D-1)/(D+2) ξCN=-2
CO (C=O基) 二色性 FCOCO (D-1)/(D+2) ξCO=4/(1-3cos2α)
これらの配向関数のうち, FXは結晶領域, FCRは非晶領域, FCNは全領域, FCOはCO基の多く存在する領域の配向を表わす。次に網目構造のゴムに対する光弾性の理論を配向関数を用いて書きなおした。延伸比をλ とすれば,
ここでnは鎖のセグメント数。
すでに知られている延伸比と張力の関係を上式と結びつけると, Fが大きくなるほど張力も大きいことがわかる。したがって配向関数の大きい繊維は強度やヤング率が大きいといえる。さらにAN/MA (90/10) の共重合体から紡糸した試料について配向関数を測定し, 次のことが明らかになった。
i) 延伸比λ が大きくなるとFの値は一定値に近づく飽和型の曲線となり, λ とともにFが急上昇する理論曲線とは異なることから, 分子鎖間のすべりが起こっていると推定した。分子配向を表わすFCNが0.3~0.4で飽和するのは分子鎖が伸び切らないうちにすべりが起こるためと考えられる。
ii) 繊維の熱処理によりFX, FCNはあまり大きな変化をしないのに対し, FCR, FCOはかなり大きい低下を示す。このことから熱処理によって分子鎖中のMA成分の多い部分が非配向化して非晶領域になると考えられるので, 熱処理繊維のFCR, FCOは非晶領域の配向を表わすと考えてよい。
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