高分子化學
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23 巻, 252 号
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  • 第1報各種の方法で測定した配向関数
    筒井 延宏, 早原 琢朗, 松村 康夫, 関口 英人
    1966 年 23 巻 252 号 p. 193-199
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル (AN)-アクリル酸メチル (MA) 共重合体繊維の配向関数F= (3<cos2θ>-1)/2を求める式を導いた。ただしθ は分子主鎖と繊維軸とのなす角である。
    X線回折 FX=1-H/180° H: 半価幅
    CR (コンゴーレッド) 二色性 FCRCR (D-1)/(D+2) ξCR=1.12
    CN (C=N基) 二色性 FCNCN (D-1)/(D+2) ξCN=-2
    CO (C=O基) 二色性 FCOCO (D-1)/(D+2) ξCO=4/(1-3cos2α)
    これらの配向関数のうち, FXは結晶領域, FCRは非晶領域, FCNは全領域, FCOはCO基の多く存在する領域の配向を表わす。次に網目構造のゴムに対する光弾性の理論を配向関数を用いて書きなおした。延伸比をλ とすれば,
    ここでnは鎖のセグメント数。
    すでに知られている延伸比と張力の関係を上式と結びつけると, Fが大きくなるほど張力も大きいことがわかる。したがって配向関数の大きい繊維は強度やヤング率が大きいといえる。さらにAN/MA (90/10) の共重合体から紡糸した試料について配向関数を測定し, 次のことが明らかになった。
    i) 延伸比λ が大きくなるとFの値は一定値に近づく飽和型の曲線となり, λ とともにFが急上昇する理論曲線とは異なることから, 分子鎖間のすべりが起こっていると推定した。分子配向を表わすFCNが0.3~0.4で飽和するのは分子鎖が伸び切らないうちにすべりが起こるためと考えられる。
    ii) 繊維の熱処理によりFX, FCNはあまり大きな変化をしないのに対し, FCR, FCOはかなり大きい低下を示す。このことから熱処理によって分子鎖中のMA成分の多い部分が非配向化して非晶領域になると考えられるので, 熱処理繊維のFCR, FCOは非晶領域の配向を表わすと考えてよい。
  • 第2報延伸による配向の変化
    早原 琢朗, 松村 康夫, 関口 英人, 筒井 延宏
    1966 年 23 巻 252 号 p. 199-204
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    延伸による分子間のすべりを評価するために, アクリロニトリル-N-メチロールアクリルアミド共重合体ゲルを延伸後, 橋かけしたモデル試料を, 膨潤によりその異方性を検討し, 分子間のすべりが相当大きく, しかも延伸条件により, すべりの程度の異なることを認めた。延伸に伴う張力, 配向の変化は, 分子間すべりを補正し, 分子鎖自体の変形に対してプロットすれば, 鎖の伸びきり効果を考慮したゴム弾性論の結果と, よい傾向の一致を見る、したがって, アクリロニトリル共重合体を延伸する場合, 分子鎖自体はゴム弾性に近い変形を行なうが, これに分子間のすべりが重なっていると推定しうる。
  • 第2報偏光透過光強度測定法について
    石橋 徹, 谷 八紘, 吉崎 修, 長井 栄一
    1966 年 23 巻 252 号 p. 205-208
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    結晶化の進行途中で凍結した試料フィルムの偏光透過光強度を測定することにより, 結晶化の進行度を決定する方法の妥当性を実験的に確認した。しかしながら, 120℃ 以上で結晶化を起こさせるとき, しばしばガラスと試料との界面において帯状に結晶した層が生成する。この層はガラス界面で発生した多くの不均一核によって球晶が密に成長することによって形成したものであるが, この層が存在すると透過光強度を低下させる原因として働く。
  • 第3報ナイロン6の等温結晶化について
    石橋 徹, 谷 八紘, 吉崎 修, 長井 栄一
    1966 年 23 巻 252 号 p. 208-212
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    前報に記した偏光透過光強度測定法を用いてナイロン6の結晶化速度を85~180℃ の温度範囲にわたって測定した。一方, 同じ試料について球晶の直径を測定して球晶成長速度, および結晶化速度の温度依存性について考察した。一次核, 球晶表面に生成する二次核はともにその一方向の核寸法が温度によらず一定と考えられる。
  • 土井 浩, 三上 陽一
    1966 年 23 巻 252 号 p. 213-221
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    溶融高分子の流動時の壁面でのいわゆるすべりの存在はまだ, その明確な確認がなされていない。金属壁面と溶融高分子との間の最大静止摩擦係数をμs, すべり摩擦係数をμdとして, 比γ=μsdを温度に対してplotすると, 温度の増加とともにγ>1からγ<1へと変化する。γ>1の状態では壁面とのあいだにすべりがあり, γ<1ではすべりがないことが推察された。γ=1はその境目でこのときの温度をTfとすると, 中圧法ポリエチレンではTf=108℃, ポリスチレンTf=165℃, ポリメチルメタクリレートTf=195℃ を得た。γ<1のときのμdは試料の粘性的挙動に直接関係していると考えられる。このときのμdの温度依存性はTfを基準温度に選ぶことにより, 1本のmaster curveで表わしうることがわかった。
  • 上田 二士
    1966 年 23 巻 252 号 p. 222-228
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン-塩化ビニルグラフトポリマーの合成を空気中前照射法によって行ない, 前照射線量, 重合温度などの合成条件と見かけ, および真のグラフト率, グラフト効率, ホモポリマー重合度などの関係を求め, グラフト機構について考察した。その結果は次のようである。1) 真のグラフト率は見かけのグラフト率の40~100%であり, 重合条件などによって変化する。2) 真のグラフト速度のアルレニウスプロットは80℃ に屈曲点を有し, その上下でそれぞれ, 11および18kcal/molである。3) グラフト効率は一般に30%以下であり, 重合温度が高いほどグラフト効率は低い。4) ポリエチレン中, および液中に生成するホモポリマーの分子量は等しく, それは主として重合温度によって変化する。
  • 後藤田 正夫, 上埜 武夫, 日馬 康雄, 松田 修
    1966 年 23 巻 252 号 p. 229-233
    発行日: 1966/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    これまでグラフト重合生成物のグラフト率の決定は, (W-W0)/W0×100 (%) で定義される重量増加率で行なわれてきた (ここでWはグラフトした後の重量, W0はグラフト前の重量)。しかし, この方法は実験室的規模では適用可能であるが, パイロット, または工業装置で得られた製品の重量を正確に測定することは困難であり, 適用できないことから, 間接的にグラフト率を測定する必要が生じる。主鎖, または側鎖がアクリロニトリルなどのような特定元素を含んだポリマーである場合, この特定元素の分析からグラフト率が決定できるが, スチレンセルロース系ではこの方法もまた不適当である。そこでスチレングラフトレーヨンのグラフト率とともに変化する種々の性質から, 間接的にグラフト率を決定する方法を検討した。赤外線吸収強度比, 比重, 吸湿率などについて調べた結果, 赤外法, 比重法は試料の量がわずかで, 正確に再現性よくグラフト率が決定できることがわかった。赤外法では重量増加率0~120%程度, 比重法でもやはりこの範囲できれいな曲線が得られ, グラフト率にして1~2%の誤差で測定できる。赤外法をベンチスケールの装置での製品のグラフト率の分布の測定に応用した例を示す。以上の方法のほかにも, グラフト率とともに変化することが予想される二三の性質, 吸水性, 染料の染着性, 誘電率などについても若干検討を行なった結果, いずれの場合にも試料の前処理がむずかしいため, 期待された結果は得られなかった。
  • 桜田 一郎, 野間 夬之, 大藤 吉雄
    1966 年 23 巻 252 号 p. 234-238
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    クロルメチル-3-アリルオキシメチル-オキセタン (CAO) と酢酸ビニル (VAc), スチレン (St) または無水マレイン酸 (MAH) とのラジカル共重合を試み, 重合挙動および得られたコポリマーの性状について検討した。CAOとVAcは容易に共重合し, 種々の組成のコポリマーが得られた。65℃ でのモノマー反応性比はγCAO=0.22±0.01, およびγVAc=1.36±0.01であった。CAO-Stの系ではStの単独重合性が大きく, 共重合は困難であった。以上の重合結果からCAOのQ-e値はQ=0.030, およびe=-1.40と求められた。CAOとMAHとの共重合はきわめて容易に進行し, コポリマ-組成の分析結果から交互共重合性が比較的良いと推定された。いずれのコポリマーも種々の有機溶剤に可溶であるが, CAO-VAc, およびCAO-MAHコポリマーは三フッ化ホウ素エーテラートで処理すると容易に不溶化する。
  • 第3報インデン-ベンゾフランのカチオン共重合
    溝手 敦信, 田中 亨, 東村 敏延
    1966 年 23 巻 252 号 p. 239-244
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    スチレン-インデン, スチレン-ベンゾフラン, インデン-ベンゾフランの共重合を30℃ で種々の溶媒・触媒を用いて行ない共重合比を求めた。モノマー反応性比は, インデン>ペンゾフラン≧ スチレンの順であった。前報で報告したようにベンゾフランの単独重合速度は, スチレンより著しく小さかったのに反して, 共重合ではベンゾフランのモノマー反応性はスチレンより大であった。共重合でベンゾフランモノマーの反応性が大きくなった原因の一つに, 生長カチオンに対するベンゾフランモノマーの選択的溶媒和が考えられる。これらの共重合比は重合条件によりかなり大きく変化することが明らかになったが, その原因は明確ではない。
  • 第5報N-カルバミル-マレアミン酸メチルとスチレンのジオキサン溶液共重合
    野間 夬之, 丹羽 政三, 加藤 芳邦, 藤井 聡, 河出 明浩
    1966 年 23 巻 252 号 p. 245-249
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    カルバミル-マレアミン酸メチルと, スチレンの共重合をジオキサン中で70℃ で行なった。モノマー反応比は1.45 (γs) および0.0 (γm) であった。このコポリマーのアルカリケン化を, ジオキサン-メタノール中で60℃ で行なった。ケン化生成物はマレイミド基, マレアミン酸基およびスチレン基で構成されている。
  • 村橋 俊介, 結城 平明, 畑田 耕一
    1966 年 23 巻 252 号 p. 250-258
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    Et3Al-β-TiCl3触媒によるスチレンの重合においてn-プロピルエーテル, n-ブチルエーテル, n-ヘキシルエーテル, およびトリエチルアミンを添加した場合の影響を化学量論的に調べた。アイソタクチックポリスチレン (Isot PSt) の生成速度は, これらのエーテルの添加とともに著しく増大して, (エーテル)/Et3Alモル比1で最大になり, モル比が1を越えると急激に減少する。エーテルの添加に伴うIsot PSt生成速度の増加の割合は (n-C3H7) 2O<(n-C4H9) 2O<(n-C6H13) 2Oの順に大きくなる。Et3Nを添加した場合にはこのような生成速度の増加はほとんど認められなかった。このIsot PSt生成速度の増加は, 添加したエーテルが触媒中のEt3Alとcomplexを形成して, 重合反応中にEt3Alによってひき起こされる触媒活性点の失活を抑制し, その結果, 立体規則性重合の活性点数の見かけの増加をきたすためであることがわかった。Et2AlCl-β-TiCl3 (Et2AlCl/β-TiCl3=1) 触媒は大量の無定形ポリスチレン (Atact PSt) を与え, Isot PStはごくわずか生成するのみである。この触媒にブチルエーテルを加えるとAtact PSt生成量は急激に減少し, 同時にIsot PStの生成量が増大してn-Bu2O/Et2AlCl=1でそれぞれ極小および極大値をとる。この場合のIsot PSt生成量の増加はEt3Al-β-TiCl3触媒の場合とは異なり, エーテルによるカチオン重合の抑制がその主なる原因であると考えられる。
  • 第1報脂肪族混合ジアミンとテレフタル酸ジメチルとのポリアミドの合成条件の検討
    後藤 芳弘
    1966 年 23 巻 252 号 p. 259-264
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    エチレンと塩化シアンのテロメリゼーション反応により生成するテロマーの誘導体である脂肪族混合ジアミンと, テレフタル酸ジメチルとからメタノール中でプレポリマーを合成し, さらに溶融重縮合を行ない, 融点225-235℃ の溶融紡糸可能な新しいポリアミドを得た。可紡性良好なポリマーを得るために重合条件を検討した。得られたポリマーの溶解性はポリカプロアミド (ナイロン6) とポリエチレンテレフタレートの中間にある。また, 溶融紡糸によって得られた繊維のヤング率は, 予期したとおリポリカプロアミドよりはるかに高い値を示した。
  • 第2報ポリアミドの融点降下について
    後藤 芳弘, 遠藤 誠司
    1966 年 23 巻 252 号 p. 264-268
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    テレフタル酸ジメチルの脂肪族混合ジアミンによるアミノリシス反応で生成するポリアミドの融点は, 同一構造を有すると考えられるナイロン塩経由のポリアミドの融点よりも約20~25℃ 低い値を示す。この融点降下について検討した結果, プレポリマー生成時のアミノリシス反応速度が小さいため, 副反応が起こり, 第二級アミンが生成し, ポリマー中に導入され, N-メチルアミド結合となり, 融点を降下させることがわかった。テレフタル酸ジメチルよりはるかに反応性に富むテレフタル酸ジフェニルを用いると, プレポリマー中に第二級アミンは存在せず, 分子量の大きいものが得られる。したがって, N-メチル化のない融点245~258℃ の良好なポリマーが得られた。
  • 第2報種々のハロゲン化金属触媒による重合
    岡村 誠三, 東村 敏延, 松田 正
    1966 年 23 巻 252 号 p. 269-273
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    SnCl4, AlBr3およびFeCl3のようなフリーデルークラフツ型触媒により, ビニルカルバゾールが固相で重合が可能であるかどうかを検討した。BF3化合物と同様にSnCl4のような液体の触媒はもちろんのこと, AlBr3やFeCl3のような常温で固体の触媒においても蒸気圧により, ビニルカルバゾールは固相でポリマーを得るこができた。これらのフリーデル-クラフツ型触媒による固相重合においてはモノマーの融点より10~15℃ 低い重合温度において重合中にモノマーが溶け出し, 融解が始まると同時に重合度, 重合速度は不連続的に大きくなることがわかった。また, 固相重合している温度範囲においては触媒の種類により重合度はほとんど影響されずほぼ一定で, ηsp/Cは0.035~0.045の範囲にあることがわかった。これらの結果より固相重合においてはモノマー結晶の配列が生成ポリマーの重合度を規定しているものと思われる。
  • 第3報ハロゲン触媒による重合
    岡村 誠三, 東村 敏延, 松田 正
    1966 年 23 巻 252 号 p. 273-278
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    カチオン重合活性の低いハロゲン (ヨウ素, 臭素, 塩素) の蒸気によってビニルカルバゾールは固相重合することがわかった。元素分析, および赤外吸収スペクトルより生成ポリマーはポリビニルカルバゾールであることを確認した。生成ポリマーの重合度は溶液重合では, ヨウ素>臭素>塩素の順に減少する。他方, 固相重合では他のハロゲン化金属触媒と同様にハロゲンの種類に無関係にほぼ一定値を示し, かつ低重合度である。重合速度は溶液重合では, ヨウ素>臭素>塩素の順であるが, 固相重合では, ヨウ素>塩素>臭素の順となる。このように固相重合で重合速度の順位が逆転するのは, 化学的な因子だけでなく触媒の大きさなどの物理的な因子により影響されるものと思われる。
  • 加倉井 敏夫, 岩井 作弥, 野口 達弥
    1966 年 23 巻 252 号 p. 279-283
    発行日: 1966/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ヒドロキシルアミン-三塩化チタン系の反応を検討した結果, この反応は中間体として・NH2を生成し, モノマー (MMA) を共存させることにより末端にアミノ基をもつポリマーを得た。また, 仕込み量から求めた平均重合度とオリゴマーの補正をした実測値との比較, ならびに生成ポリマーの分析からこのポリマーは両末端にアミノ基をもち, 停止反応はほとんどラジカルの再結合によることがわかった。
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