これまでグラフト重合生成物のグラフト率の決定は, (
W-W0)/W
0×100 (%) で定義される重量増加率で行なわれてきた (ここでWはグラフトした後の重量,
W0はグラフト前の重量)。しかし, この方法は実験室的規模では適用可能であるが, パイロット, または工業装置で得られた製品の重量を正確に測定することは困難であり, 適用できないことから, 間接的にグラフト率を測定する必要が生じる。主鎖, または側鎖がアクリロニトリルなどのような特定元素を含んだポリマーである場合, この特定元素の分析からグラフト率が決定できるが, スチレンセルロース系ではこの方法もまた不適当である。そこでスチレングラフトレーヨンのグラフト率とともに変化する種々の性質から, 間接的にグラフト率を決定する方法を検討した。赤外線吸収強度比, 比重, 吸湿率などについて調べた結果, 赤外法, 比重法は試料の量がわずかで, 正確に再現性よくグラフト率が決定できることがわかった。赤外法では重量増加率0~120%程度, 比重法でもやはりこの範囲できれいな曲線が得られ, グラフト率にして1~2%の誤差で測定できる。赤外法をベンチスケールの装置での製品のグラフト率の分布の測定に応用した例を示す。以上の方法のほかにも, グラフト率とともに変化することが予想される二三の性質, 吸水性, 染料の染着性, 誘電率などについても若干検討を行なった結果, いずれの場合にも試料の前処理がむずかしいため, 期待された結果は得られなかった。
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