抄録
チグラー-ナッタ触媒で重合したポリ-4-メチル-1-ペンテンを一連の溶媒系で沸点における逐次抽出を行なって, 各分別区分の動的粘弾性を種々の物理化学的性質に対比させて試料中の微細構造について考察した。沸点の高い溶媒で抽出される区分ほど立体規則度は高いが, 高規則度部分になると分子量はほぼ一定となった。各区分の立体規則度はMillerの関係式によって評価したが, いずれの区分もアイソタクチックとヘテロタクチックとのプロックコポリマーから成立していると推測できた。分別試料の動的粘弾性測定の結果, 未延伸結晶化フィルムではガラス転移温度に対応するtanδのピークの温度は結晶化度の増大に伴って低温側にシフトした。延伸物では立体規則度の増大に伴ってE″の主分散は高温側に移動することが認められた。さらに熱履歴の粘弾性挙動に及ぼす影響について検討したが, 種々の実験事実が示すこのポリマーの固体物性上の特異な挙動は非晶相のポリマー鎖の充てん密度の異常な性質に基くものとして解釈された。