アイソタクチックポリプロピレン球晶の核発生と成長機構を解明し, 同時にBulkの結晶化現象 (高化, 22, 597 (1965)) を球晶機構から説明することを目的とした。市販級ポリプロピレンの沸とうn-ヘプタン抽出残からの分別物, 未分別物および熱分解物を試料とした。赤外, 比重, 融点測定などから全試料を通じて立体規則性度がほとんど変化しないことを確かめた。予備実験によって試料の形態, 溶融条件, 結晶化条件をかなり詳細に検討した。分別区分の球晶の核はほぼ一次反応に従って発生した。一方, 未分別物の核発生速度は一次反応から大きくずれた。核発生速度定数νと極限核密度N∞はともに分子量や分布にあまり左右されず, 結晶化温度に大きく依存した。核発生は核どうしが接触し終る以前に停止した。高分子量物を結晶化させるとより規則正しい球晶が得られた。分子量3.2×10
3の極低分子量物を130℃以下で結晶化させると, もはや球晶成長が認められなかった。球晶半径の成長速度Gは時間的に一定で, 核の発生時期や核の他の部分の接触の有無に全く無関係であった。比G/νは結晶化温度が10℃変わると約10倍程度変化し, Bulk結晶化曲線の重畳性と矛盾した。しかし, νt>>1 (t: 結晶化時間) であることより, Bulk結晶化のAvramiの係数n=3.0~3.5の実験事実が球晶機構からも裏づけられた。同一結晶化温度で比較すると, 分子量4×10
5においてGが最大となった。同一過冷却度で比較すると, 分子量が小さいほどGが増加した。Gは (T
m/T) (1/T
m-T) (1/T
m-T)
2 (T
mは融点, Tは結晶化温度) にほぼ比例し, プロットの勾配も分子量とともに増加した。球晶の複屈折度の符号は, 分子量M
v>8.6×10
4の場合, 130℃以下の結晶化温度で混合型, 140℃以上では負, M
v=2.41×10
4の場合, 120~150℃で常に正, M
v=3.2×103の試料では130~150℃で常に混合型であった。符号の変化は130~140℃で徐々に起こった。
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