1967 年 24 巻 272 号 p. 790-794
イタコン酸無水物の塊状ラジカル重合に際して, 副反応としてのシトラコン酸無水物への転位の起こりやすさを検討することを目的とし, 種々の温度に加熱したイタコン酸無水物の変化を追跡した。その結果高純度のイタコン酸無水物は少なくとも90℃における転位は無視しうるほど緩慢であり, さらに温度を上げると転位よりも熱重合を起こしやすく, 150~160℃以上の高温に至って初めて熱重合と転位の両反応を起こすことが明らかになった。一方純度の悪いイタコン酸無水物は比較的低温でも溶融時にかなりすみやかに転位するが, その速度は不純物の種類と含有率により鋭敏に影響を受けるようである。たとえば不純物としてイタコン酸が共存するとイタコン酸無水物の熱重合は抑制され, 転位が容易に進行する。