1968 年 25 巻 283 号 p. 749-755
高分子酸存在下でのメタクリル酸メチル (MMA) 水媒体重合において, ポリメタクリル酸 (PMAA) では得られたエマルジョン溶液がゲル化したが, ポリアクリル酸 (PAA) ではゲル化しなかった。そこで, このゲル化機構について検討し, 次の結果を得た。1) ゲル化は非常に低いMMAおよびPMAAの濃度で起こった。2) 重合の進行とともに, PMAAは生成エマルジョン粒子内, 特に粒子表面付近へしだいに移行し, ゲル化点ではほとんど移行した。この粒子表面上のPMAAは, 高分子電解質としてはゲル化に関与しなかった。3) ゲル化直前では, 未重合MMAは粒子内よりもむしろ水相に多量存在した。4) ゲル化物はアルカリ添加によって再分散し, ゲル化物中のPMAAはメタノールによってほとんど抽出された。以上の結果から, 水相ならびに粒子表面付近に存在するPMAAが, MMAと水とを吸着固定化し, 粒子を蜂巣状に弱く橋渡しすることによって, 溶液全体の流動性をなくしてゲル化させることを明らかにした。