高分子化學
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ガラス繊維強化ナイロン6プラスチックの繰り返し曲げ疲労による動的性質の変化
自念 栄一鈴木 恵中村 信
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1971 年 28 巻 311 号 p. 190-199

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抄録

短繊維分散型ガラス繊維強化ナイロン6プラスチックを定荷重型平面曲げ疲労させたときの動的性質の変化と, 材料の組織構造変化との関係を両端自由曲げたわみ振動と顕微鏡による観察から調べた. まず疲労によるナイロン6の動的性質の変化は試料の水分率によって変わり, 吸湿試料では弾性率は繰り返し数とともに上昇するが, 乾燥試料では弾性率は低下した. 両者の損失正接はそれぞれの弾性率と逆の傾向を示した. したがって試料中の水分子は疲労によって生じる弾性率の低下を阻止しようとする傾向があった. 複合材料の疲労による動的弾性率は, 弾性率が減少する第1段階, それに続くほぼ一定の第2段階, さらに上昇に転じ, 初めの値近くまで回復する第3段階に分けられる. これら3段階の時間的長短は応力振幅, ガラス繊維混入率, 繊維配向に関係する. 損失正接の変化は弾性率の変化と逆の傾向を示す. 疲労過程中の材料の巨視的構造変化は, 第1段階でガラス繊維の切断, 繊維と母材とのはく離が生じ第2段階に入る. その後微小クラックへ発達して白化し, さらに多数発生した微小クラックが巨視的なクラックへ成長して第3段階に入り後破断に至ることなどがわかった.

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