高分子化學
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クレーによるメタクリル酸メチルの重合
第2報 クレーによるメタクリル酸メチル過酸化物の吸着について
松本 恒隆宗 伊佐雄木村 孝徳
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1971 年 28 巻 311 号 p. 266-272

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抄録

クレーによるメタクリル酸メチル (MMA) の無触媒塊状重合の開始機構に対する知見を得るため, クレーに対するMMA過酸化物の吸着現象を詳細に検討し, 次の結果を得た。 (1) 重合はpH3~5の酸性を示すクレーのみで可能であった。 (2) クレーに対するMMA過酸化物の吸着はクレーのpHに関係なくよく起こった。また, MMA過酸化物吸着クレーをアセトンおよびベンゼンで抽出した場合, アセトンでは吸着量のほぼ2倍のMMA過酸化物が抽出されたが, ベンゼンではほとんど抽出されなかった。 (3) 系中の過酸化物初濃度およびクレー量の増加とともにクレーに対するMMA過酸化物の吸着量およびアセトンによる抽出量はともに増加した。 (4) クレーのpHが酸性になるほど吸着量に対する抽出量の割合は著しく増大したが, 吸湿クレーではその値は酸性領域で著しく小さくなった。また酸性クレーでは水が存在するとクレー中の過酸化物の分解速度は非常に大きかったが, 塩基性クレーでは水の有無に関係なく分解速度は小さかった。
以上の諸事実から, MMA過酸化物は容易にクレーに吸着され, クレーのラメラ間隙ではさらに新たな過酸化物が生成されること, およびこれらの過酸化物は酸性のときのみ, 水の存在下で著しく分解することがわかった。これらの事実とクレーによるMMAの重合性, すなわち, クレー, 水, MMA過酸化物によって重合が促進されることとはよい相関関係にあることを認めた。

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