高分子化學
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クレーによるメタクリル酸メチルの重合
第3報 クレー存在下での水媒体サスペンジョン重合
松本 恒隆宗 伊佐雄八十川 俊一
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1971 年 28 巻 311 号 p. 273-278

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抄録

クレー存在下でのメタクリル酸メチル (MMA) の無触媒水媒体サスペンジョン重合を行ない, その際の重合速度に及ぼすクレー濃度, MMA過酸化物濃度などの諸因子の影響および重合物中のクレーラメラ間隙で重合したポリマーの割合などを検討することにより, クレーによるMMAの重合機構を明確にしようとした。得られた主な結果は次のとおりである。 (1) 重合速度は重合の初期 (重合率0~10%) では小さく, 重合率が15~20%に達すると急激に増大した。 (2) 重合率2~3%程度の重合初期における重合速度はクレー濃度の1.5乗, MMA過酸化物濃度の0.3乗に依存し, 活性化エネルギーは27.5kcal/molであった。一方, 重合率30%の点における重合速度はクレー濃度の0.4乗, MMA過酸化物濃度の0.3乗に依存し, 活性化エネルギーは12.5kcal/molであった。 (3) MMAに前浸せきしたクレーを用いると, 重合速度は重合初期で特に増大した。一方, 水に前浸せきしたクレーを用いると, 重合の開始は抑制され, 重合初期の重合速度はかなり小さくなったが, 重合立ち上がり後の重合速度は未処理クレーを用いた場合より大きくなった。 (4) 重合物をベンゼンで抽出して, クレー中のポリマー量を測定したところ, 重合率約30%まではクレー中のポリマー量は直線的に増加したが, 30%以上になると一定量となり, クレーに対して約30wt%のポリマー量となった。一方, アセトン抽出によっても同様な傾向を示したが, 一定量となるポリマー量はクレーに対して約12wt%であった。
以上の結果から, 重合率20%前後で重合機構の異なることが示唆され, 重合は初期においてはクレーのラメラ間隙で進行し, クレーに対して約30wt%のポリマーが生成した後はクレーの表面で進行することが推定された。

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