高分子論文集
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ポリ-L-グルタミン酸-γ-メチル繊維の分子配向と粘弾性挙動
野田 隆弘阿部 嘉宣坂元 隆一
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1974 年 31 巻 4 号 p. 203-207

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抄録

ポリ-L-グルタミン酸-γ-メチル (PMLG) 未延伸繊維が約150℃で顕著な動的粘弾性分散を示すことをすでに報告した1) 。この温度で未延伸繊維のクリープ挙動を観察したところ, PMLG繊維が容易にクリープ変形を受けることが見いだされた。クリープした繊維の分子形態は赤外線吸収スベクトル, X線回折より, α-ヘリックスであることが明らかになったので分子形態の変化が起こらないと考えた。クリープ変形により分子配向がかなり増大することがX線回折から明らかになった。クリープした繊維の動的粘弾性分散は160, 180℃で二つの極大を示した。分子配向の増加に伴い180℃の極大は増大したが, 160℃の極大は減少した。実験結果から, これらの力学分散の分子的機構について次のように考察した。PMLGの側鎖はこれらの温度で全く屈曲性になっているから, PMLG分子の剛体棒状の主鎖は, ゴム状態の側鎖のマトリックスにより, 囲まれているであろう。外力が加わるとα-ヘリックス分子のすべり運動と配向が起こるであろう。160℃の分散は未配向ヘリックスの運動により, 180℃の分散はα-ヘリックス結晶子の運動によるものとした。

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