1980 年 37 巻 4 号 p. 293-298
高分子カルボン酸とアゾ色素からなるコンプレックス溶液の光による可逆的なpH変化と高分子の化学構造との関係を検討する目的で, 高分子カルボン酸としてアクリル酸 (AA) -アクリルアニリド (AAn), メタクリル酸 (MA) -メタクリルアニリド (MAn) あるいはMA-メタクリルアミド (MAm) 共重合体を合成した. MA共重合体水溶液にアニオン性のアゾ色素を添加すると低中和度領域でコンプレックスが形成され, 結合した色素の負電荷により系のpHが上昇した. AA-AAn共重合体系の場合には, 色素の添加により逆にpHが低下し, 中性塩を添加したときと同様の静電しゃへい (遮蔽) 効果を示した. MA共重合体からなるコンプレックス水溶液に光照射と光しゃ (遮) 断を交互に行うと, 色素の光異性化と熱異性化に対応して系のpHが可逆的に変化することがわかった. また, このような光pH変化の領域が, 共重合体の組成あるいはコモノマーの種類を変えることで規制できると結論した.