1983 年 40 巻 3 号 p. 151-156
口腔内において長期間にわたってフッ素イオンを徐々に放出させ, 歯のエナメル質をフッ素化し抗う蝕性を向上させる材料として, メタクリル酸フッ化物 (MF) -メタクリル酸メチル (MMA) コポリマーを検討した. モノマー仕込み組成の異なる5種類のMF-MMAコポリマーをベンゼン溶液中での共重合により合成した. MF-MMAコポリマー単独のフィルムあるいはポリメタクリル酸メチル (PMMA) とのブレンドポリマーからなるフィルムを用いて, これを0.2Mのリン酸緩衝液中 (pH7) に浸漬した場合のフィルムからのフッ素イオン放出速度及び引張強度の経時的変化を調べた. MF-MMAコポリマーフィルムに比して, ブレンドポリマーフィルムではポリマー中のフッ素含有率に対するフッ素イオン放出速度は大きく, 加水分解に伴って酸無水物が生成していることがIRスペクトルで認められた. 更に常温硬化時間に及ぼすMFの影響を検討したが, MF-MMAコポリマーが歯科材料として実用性のあることが認められた.