高分子論文集
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プラズマ処理によりポリプロピレン表面に生成した極性基の反転
多留 康矩高岡 京
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1986 年 43 巻 6 号 p. 361-367

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抄録

疎水性高分子の表面はプラズマ処理により親水化する. しかし, この表面の親水性は保存時間の経過とともに退行する. この主な原因に高分子表面における極性基の反転が考えられる. そこで, ポリプロピレンフィルムの表面を酸素及び窒素プラズマで処理をほどこし, この表面の元素組成をESCAにより経時的に追跡した. この結果, 表面に生成した極性基は内部にもぐり込み, 内部の炭化水素鎖が表面に現れる. この反転の経時的変化の傾向は表面の水との接触角の退行の傾向と同じである. また, この極性基の反転は低温 (-196℃) で起こりにくく, 高温 (100℃) で起こりやすい. この極性基の反転により表面エネルギーが緩和するに要する時間はプラズマ放電時間に影響され, 長時間プラズマ処理試料では, 緩和に長時間要した. この極性基の反転の難易性は基の種類によって異なり, プラズマ処理直後では主に親水性の大きい基が先にもぐり込む. また, 表面エネルギーの緩和が完了した試料表面には比較的親水性の小さい基の一部が残る.

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