高分子論文集
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ポリペプチド表面のESCA分析
久後 行平北浦 達朗西野 潤
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1988 年 45 巻 5 号 p. 441-447

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抄録

ホモポリペプチドの極表面構造に関する知見を得るため, α-ヘリックス構造をとることが知られているポリ (γ-ベンジル L-グルタメート) (PBLG) とポリ (ε-N-ベンソキシカルボニル L-リジン) (PBCL) の光電子分光 (ESCA) 解析を行った. その結果, 炭素に対する酸素の比すなわちO/C値が, 光電子の脱出角45°-60°の時にいずれのポリペプチドの場合もそのバルク組成値と一致した. また電子の平均自由行程を用いた計算から, 測定深さとしては, その角度においてPBLGの場合は約16.3-19.9Å, PBCLの場合は約16.6-20.4Åが得られた. ヘリックスロッドの断面の直径の文献値は, PBLGでは15.0Å, PBCLでは18.0Åであるが, これらの値は上記の測定深さの値と良好な一致を示した. したがって, α-ヘリックスという特有の二次構造の深さ方向の分布には特異性があり, 脱出角45-60°において, ヘリックスの1ロッドの断面に相当する深さを測定しているということが示唆された.

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