高分子材料の力学的性質や変形の動力学的機構をミクロな視点から調べるため, 非晶質高分子の計算機引張実験をMolecular Dynamics (MD) simulationを用いて試みた. CH2を一つの球状粒子として枝分かれなく連結した鎖を周期的境界条件下で基本セル内において生成し, ポリメチレンの非晶質状態のモデルとして用いた. 一定引張応力 (2×108Pa) 下でのMDを用いた結果, 30000ステップ (143ps) で巨視的変形と配向の変化のようすを捉えることができた. 配向の時間的変化には段階があり, 引張り出してから約30psまでは配向の変化は見られず, 約70psまで配向の兆しをみせ, 約70psから配向に変化が見られた. これに対し歪は, 引張り出してから約30psまで, 引張方向にはほぼ一様に時間変化したが, これに垂直方向には変化が見られず, 約30psから垂直方向の歪が生じ, 約70psから引張方向の歪速度に変化がみられた. 微視的配向と巨視的変形との間には密接な相関が見られることがわかった.