高分子論文集
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51 巻, 4 号
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  • 安部 明廣
    1994 年 51 巻 4 号 p. 213-221
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ネマチック液晶状態を取る多くの化合物について, NMRの磁場中 (~12 T) では液晶場の配向ベクトルが磁場の方向と一致することが知られている. 液晶の一部に重水素ラベルをして2H NMR測定を行うと, 核四極子相互作用による分裂を示し, 分裂巾からラベルを施した結合の配向秩序度が求まる. 分子内回転が許されている鎖状分子の四極子分裂は, 分子全体としての配向に加えて, コンホメーションに関する平均にも依存する. 二つの寄与を適当な理論モデルまたは統計的シミュレーション・モデルを用いて分離することにより, 液晶などの異方性場に置かれた鎖状分子のコンホメーションを推定することが可能である. 本論文では, 回転異性状態 (RIS) シミュレーション法により, (1) リオトロピック液晶を形成するポリ (γ-ベンジルL-グルタメート) (PBLG) α-ヘリックスの側鎖コンボメーションと (2) サーモトロピック液晶となるα, ω-ビス [ (4, 4′-シアノビフェニル) オキシ] アルカン (CBA-n) に含まれるスペーサー-O (CH2) nO-のネマチック・コンボメーションを解析した. いずれの例においても, 鎖に沿って結合コンボメーションに長距離の相関が見られることを指摘した. これらの結果を踏まえて, 鎖状部分のコンホメーションと系の熱力学的性質との関わり合いについて考察した. さらに, MDシミュレーションの現状についても言及した.
  • 浜田 智之
    1994 年 51 巻 4 号 p. 223-227
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Ab-initio LCAO Hartree-Fock分子軌道計算によりCPHF (Coupled Perturbed Hartree-Fock) 法を用いてポリアセチレンおよびポリジアセチレンオリゴマーの共役主鎖方向の3次非線形分極率γzzzzを計算した. 計算はポリアセチレンオリゴマーの非共鳴波長領域におけるTHG実測値を定量的に再現し, 妥当である. ポリアセチレンオリゴマーはポリジアセチレンオリゴマーと比較して大きなγzzzzを有し, 共役構造が3次非線形性に影響を及ぼすことが判明した. オリゴマーの計算より無限鎖長ポリマーの非線形性の大小関係を定性的に予測できることから, 共役系ポリマーの3次非線形性発現機構の空間的局所性が確認できる.
  • 高橋 勇秀, 石井 孝浩, 網屋 繁俊
    1994 年 51 巻 4 号 p. 229-235
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    p-ヒドロキシ安息香酸 (p-HBA) 系液晶高分子の理論弾性率の評価に対し, ニューラルネットワーク手法の適用を試みた. 初めに, p-HBA, m-ヒドロキシ安息香酸 (m-HBA), 2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸 (HNA) の各種組成比の共重合体の理論弾性率をTreloarの方法を用いて計算し, その結果をニューラルネットワークに学習させた. 次に未学習のp-HBA, m-HBA共重合体のポリマーについてニューラルネットワークで予測を行った. Treloarの方法での計算結果と比較した結果, 非常に良く一致した. さらに学習が終了したニューラルネットワークを用い, 理論弾性率に及ぼす構造の影響を定量的に評価した.
  • 相川 泰
    1994 年 51 巻 4 号 p. 237-243
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子の一次構造から, 配向時の複屈折を予測するための計算法2種について検討した. まず, 少量のポリマーの複屈折の実測法を工夫し, 定量性を確認した. 実測値は, 溶液キャスト法により作成したサンプルフィルムを, 定荷重下, 定変形速度で熱延伸した試料の, 透過光の位相の遅れ測定により求めた. 次に, 伸びきり鎖の分極率異方性から屈折率異方性を計算し, 複屈折を求めた. 分極率の計算法として, 結合分極率のベクトル和から算出する方法, および半経験的分子軌道計算による方法の2法を試した. 実測値と計算値を比較検証したところ, 両計算法とも実測値とよい相関を示した. 分子軌道計算の方が, 任意性やパラメーター依存性が少ないが, 計算量は多い. また, 低複屈折高分子の分子設計指針としてCross-Planer Aromatic Groupの概念が有効であることが分かった.
  • モデル化合物の発光, および光反応性
    戸木田 裕一, 井野 勇仁, 岡本 彰夫, 長谷川 匡俊, 進藤 洋一, 杉村 徳子
    1994 年 51 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    ベンゾフェノン型ポリイミドの光反応性を決めている光誘起分子内電荷移動 (CT) 過程とポリイミド鎖のコンホメーションおよび回転障壁との関係を調べた. イミド環の窒素原子と芳香環との結合 (N-Ar) のまわりのコンホメーションに着目し, フタルイミド環平面と芳香環との間の最安定二面角及び回転障壁を量子化学計算 (semiempirical: AM1, ab initio: STO-3G) によって算出した. 芳香環上のアルキル置換基がメタ位の場合N- (3-ethylphenyl) phthalimideは回転障壁はかなり小さく自由回転に近いが, オルト位の場合N- (1, 5-diethylphenyl) phthalimideは立体障害のため最安定二面角は約73°と平面性が失われており, かっ非常に高い障壁によって回転は束縛されているという結果が得られた. さらにメタ置換体およびオルト置換体について分子内CT遷移の起こりやすさを量子化学計算から定性的に見積もった. この結果は, ベンゾフェノンビスイミドモデル化合物の光還元反応の実験結果から導かれた光誘起分子内CT過程に関する仮説を支持するものである.
  • 安藤 慎治
    1994 年 51 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    半経験的分子軌道法により構造最適化を行ったポリイミドの基本骨格からファンデアワールス体積を, また経験的な加成則から分極率を計算して, ポリイミドの屈折率を評価したところ, 実測値と比較的高い相関 (rr2=0.90) が得られた. しかし, その相関の傾きは1.0から大きく外れており, これはポリイミド分子の凝集状態がその分子構造によって変化することを示している. 屈折率の実測値から分子の凝集状態を表すパッキング係数を評価したところ, 屈折率の大きなポリイミドは凝集状態が密で, 分子鎖が秩序をもってパッキングしていると考えられ, 一方, 屈折率の小さなポリイミドは凝集状態が疎であり, 分子鎖がゆるくパッキングしていると考えられる. このことは, 屈折率の高いポリイミドで秩序構造の存在が示されていること, 一方, 屈折率の低いポリイミドはガラス転移点が低く, 溶媒溶解性と光透過性が高いことによって裏づけられる.
  • 小倉 一郎, 山本 隆
    1994 年 51 巻 4 号 p. 259-263
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子材料の力学的性質や変形の動力学的機構をミクロな視点から調べるため, 非晶質高分子の計算機引張実験をMolecular Dynamics (MD) simulationを用いて試みた. CH2を一つの球状粒子として枝分かれなく連結した鎖を周期的境界条件下で基本セル内において生成し, ポリメチレンの非晶質状態のモデルとして用いた. 一定引張応力 (2×108Pa) 下でのMDを用いた結果, 30000ステップ (143ps) で巨視的変形と配向の変化のようすを捉えることができた. 配向の時間的変化には段階があり, 引張り出してから約30psまでは配向の変化は見られず, 約70psまで配向の兆しをみせ, 約70psから配向に変化が見られた. これに対し歪は, 引張り出してから約30psまで, 引張方向にはほぼ一様に時間変化したが, これに垂直方向には変化が見られず, 約30psから垂直方向の歪が生じ, 約70psから引張方向の歪速度に変化がみられた. 微視的配向と巨視的変形との間には密接な相関が見られることがわかった.
  • 田代 孝二, 小林 雅通, 矢吹 和之
    1994 年 51 巻 4 号 p. 265-274
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    どの方向にも剛い新規高分子材料を設計開発することを目的とし, 既存のポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール, ポリ-p-フェニレンピロメリトイミド, ポリ-p-フェニレン, ポリアセチレンなど剛直高分子鎖に3次元架橋を施した結晶構造モデルを電子計算機で構築し, 3次元弾性定数を計算した. その結果, 場合によってはダイヤモンドの2倍近くにも及ぶ高いヤング率を全方位的に示す構造が見いだされた.
  • 青木 昭宏
    1994 年 51 巻 4 号 p. 275-282
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    平衡系重縮合反応における環状オリゴマーの生成量は線状オリゴマーの末端近接確率より計算できる. 従来この末端近接確率はRIS (Rotational Isomeric State) 法により得られたi量体の末端間平均自乗距離〈RiRi2〉からガウス鎖を仮定して求められた. この手法によれば重合度の小さいオリゴマーほど〈RiRi2〉が小さく, したがって環状オリゴマーの生成量が多くなるという結果を与える. これは必ずしも (特に屈曲性の小さい重合体においては) 実測と合わない. 本報では4種のポリエステルについてモンテカルロシミュレーションにより分子鎖を発生させ, 末端近接構造を数え上げることにより環状オリゴマー生成量を予測し, 低分子量環状オリゴマー (特に2量体環状オリゴマー) の生成量に関して実測の結果を再現した.
  • 青木 昭宏
    1994 年 51 巻 4 号 p. 283-287
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    従来の隣接2面角相互作用 (~1-5相互作用) を取り入れたRIS (Rotational lsomeric State) 法によるpoly (ethylene terephthalate) (PET) 環状3量体生成量の予測は実測値と合わない (1/5~1/10). この原因が非結合相互作用を無視したためであることを明らかにし, 1-6以上の非結合相互作用を取り入れた高分子鎖の統計を試みた. その結果PETの場合, 1-20相互作用を取り入れた線状3量体に対するシミュレーションより, 環状3量体生成量としてより妥当な値を得た. またこのシミュレーションをより高分子量のPETに適用し末端間自乗平均距離を求めたところ, 非摂動末端間自乗平均距離〈R20の実測値とよい一致を示した.
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