高分子論文集
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ポリブチレンテレフタレートのTg近傍の熱処理による構造変化
山登 正文木村 恒久伊藤 栄子
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1995 年 52 巻 2 号 p. 110-113

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抄録

ポリブチレンテレフタレート (PBT) のガラス転移温度 (Tg) について, 力学的, 誘電的, 熱的方法により測定された結果が報告されているが, その値は23~80℃とかなり幅がある. 本研究は, PBTのTgを決定し, その温度近傍での熱処理によるTgおよび非晶構造の変化について考察することを目的にした. 熱測定により求めたTgと昇温速度との平方根との間に直線関係がなりたち, この直線を昇温速度0に外挿した値23℃をPBTのTgであると定めた. 20℃で熱処理した試料のTgは熱処理時間とともに高温側へシフトし, Tg以上の温度でピークが観察されることから試料は室温においてエンタルピー緩和が起こっているものと考えられる. 広角X線回折パターンでの非晶性ハローには, 熱処理時間の経過とともに変化が見られた. すなわち, エンタルピー緩和により芳香環のパッキングがα型結晶に近い構造をとるようになると考えられる. また固体13C NMR測定においてはスペクトルはどの熱処理試料においてもほとんど変化が見られなかったが, 芳香環のスピン格子緩和時間は熱処理により増加した. このことは, エンタルピー緩和による非晶構造の変化はアルキル基のコンフォメーション変化を伴わず, 分子鎖のパッキング, 特に芳香環部分のパッキングがα型結晶に近い構造になるために起こることを示唆している.

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