高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
高分子, 低分子, 水素結合性液体のガラス転移温度, ガラス状態, および局所分子運動
直木 基祐
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 53 巻 12 号 p. 803-813

詳細
抄録

低分子のオルトターフェニルとトリフェニルクロロメタン, 高分子のポリ塩化ビニル, および水素結合性液体のD-ソルビトールにおける, ガラス転移, ガラス転移近傍の分子運動, ガラス化履歴, ガラス状態, およびガラス中の局所分子運動などについて, それら性質の普遍性を議論している. これらすべての性質において, 高分子が分子内自由度を多数持っているということによる特異性は何もない. 高分子で配置エントロピー理論が成立し自由体積理論が成立しないのは, 高分子の分子内配位エントロピーの大きさによるのではなく, 分子間配置エントロピーあるいは配置エネルギーが諸々の分子間相互作用を数え落としなくカウントできるからで, 低分子においても一般的には自由体積理論は成立しない. 分子間配置エネルギーの分布の概念は水素結合性ガラスおよび圧履歴ガラスを含むすべてのガラスの局所運動の性質をうまく説明する. 局所運動もまた個別の分子の個別の基の運動ではなく, 諸々の分子間相互作用の結果生じる普遍的なものである. 水素結合性液体の分子運動を理解するために, 巨視的活性化量と微視的活性化量を結びつけた試験的な式が検討されている. それは加圧によって水素結合が切れる (弱くなる) 可能性を示唆し, ガラス転移温度の圧力依存性, 活性化体積, 緩和強度の挙動を説明する.

著者関連情報
© 社団法人 高分子学会
前の記事 次の記事
feedback
Top