抄録
新しいアモルファス分子材料の創製を目指して, 新規なπ電子系分子1, 3, 5-トリ (N-カルバゾリル) ベンゼン (TCB) を設計・合成し, そのガラス形成ならびにガラスからの緩和過程を検討した. その結果, TCBは, 溶融サンプルを冷却することにより, 容易にガラスを形成することを見いだした. CPKモデルから, TCBは, 三つのカルバゾール環が中心ベンゼン環の平面から著しくねじれた非平面構造を有していることが示唆され, このことがガラス形成を容易にしていると考えられる. TCBガラスは, カルバゾール環を含まない類似化合物1, 3, 5-トリス (4-メチルフェニルフェニルアミノ) ベンゼンのガラスと比較して, 格段に高いガラス転移温度 (122℃) を有することが明らかとなった. この結果から, 剛直な置換基の導入が, ガラス転移温度向上のための分子設計指針となることが示された. また, TCBは, ガラスを形成するのみならず, 2種類の結晶形態をとるポリモルフィズムを示すことを見いだした.