高分子固体表面部位の分子運動を評価するために, 電子スピン共鳴 (ESR) の応用を考えた. 固体ポリメチルメタクリレート (PMMA) の分子運動特性を観測するために, メタノール中でスピンラベル化を行った. この方法で得られた分子運動転移点T5.0mTは, バルク (内部) の分子運動転移点T5.0mTより低いことが確認され, 表面部位の分子運動を反映していると言える. このT5.0mTとその時の回転緩和時間τESRとWLF式とからPMMAの表面のガラス転移温度を見積もることができ, 表面ガラス転移温度は, バルクのガラス転移温度より約30~40K低いことが確認された. これは, PMMAのセグメント鎖密度が表面とバルクでは, 異なることを示している. さらに, 表面分子運動性が, PMMAの立体規則性に強く依存することが明らかとなった. これは立体規則性が, 表面のガラス転移温度にも強く反映することを示している.