1997 年 54 巻 7 号 p. 434-439
降伏過程におけるガラス状ポリメタクリル酸メチル (PMMA) の単一緩和時間を単純な非線形2要素モデルを援用して評価した. このモデルは1個のバネと粘度が可変な1個のダッシュポットからなっており, 後者の要素は降伏過程における非平衡ガラス構造の量的表現に利用できることがすでにわかっている. このモデルを用いて, ひずみ依存性の緩和時間τrおよびτssを2種類の異なる実験結果から別々に算出した. 緩和時間τrは変形を停止した直後に観察された緩和応力からほぼ直接求めた. もう一方の緩和時間τssは一定の弾性率値として延伸時の初期弾性率を仮定した2要素モデルを応カ-ひずみ曲線に適合させて求めた. 緩和時間τssはτrと良好に一致した. このことより, この単純な非線形2要素モデルが高分子ガラスの過渡的粘弾性挙動を定量的に表現するために極めて有用であることがわかった.