高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
分岐高分子を用いたリチウムイオン伝導性アモルファスマトリックス
池田 裕子
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 57 巻 12 号 p. 761-769

詳細
抄録

アモルファスなオキシエチレンセグメントをマトリックスとする分岐型高分子のリチウムイオン伝導性と構造について概説した. 特に, エラストマーの分子設計に基づいて, 共重合法により合成した側鎖に低分子量オキシエチレンセグメントを有する高分子量分岐型ポリ (オキシエチレン) (PEO) を中心に記述した. トリ (オキシエチレン) セグメントをもつ高分子量分岐型PEOは, 分岐鎖それ自体の化学構造と分子運動性がリチウムイオン伝導に有利であり, 同時に, 側鎖導入によって系の結晶性とガラス転移温度が低下するという分岐効果から, 30℃で10-4S/cmオーダーの高い導電率を示した. 分岐型PEOが低分子量の場合には力学特性の向上のためにネットワーク構造形成が必要となるが, この高分子量分岐型PEOはネットワーク構造を付与することなしにゴム弾性を示し, 成形加工が容易で, 高分子固体電解質材料として電極との接触も良好であった. 薄型・軽量化可能な2次電池などのデバイスへ実用化するためには, 材料設計上さらに工夫は必要であるが, 高分子量のアモルファス分岐型PEOはリチウムイオン伝導性複合体のマトリックスの成分として有望と考えられる.

著者関連情報
© 社団法人 高分子学会
次の記事
feedback
Top