2000 年 57 巻 4 号 p. 167-179
必須アミノ酸の一種であるL-アルギニン (L-Arg) を配位子に用いた金属錯体 [Cu (L-Arg) 2] 2+に対し, 特異な水素結合性カウンターアニオンを用いることにより二重らせん構造, 一重らせん構造, シート構造といった自己組織化構造を発現させた. 得られた結晶について固体状態の吸収スペクトル, ESRスペクトルを測定したところ, おのおの金属の配位様式, および秩序構造をよく反映していることが示された. 二重らせん構造を形成する [Cu (L-Arg) 2] (isophthalate) について, これに対応する [Pd (L-Arg) 2] 2+- (isophthalate) 系の溶液中のCD, NMRスペクトル挙動から, 組織構造化の形成過程についての知見を得た. 以上の結果をあわせて, 自己組織化構造を制御する因子について考察した.