高分子論文集
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(ポリイミド/銅) 界面における銅マイグレーション挙動の解析
三木 規彦高原 淳梶山 千里
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2000 年 57 巻 4 号 p. 233-243

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抄録

数種の調製法により得られた (ポリイミド/銅) 2層基板界面における銅マイグレーション現象を, 動的2次イオン質量分析法 (D-SIMS) により解析した. D-SIMS測定により得られたプロファイルからは, ポリイミド層への銅マイグレーションの発生の有無が明らかに確認することができた. 銅のマイグレーション状態は, 界面形成時にポリマー成分のカルボキシル基含有の有無と, 前駆体溶媒の特性に大きく依存した. D-SIMS測定の結果から, (ポリイミド/銅) 界面における銅マイグレーション状態のモデルが考案された. このモデルは両層の相互貫入により形成される「界面層」と, 銅と錯体を形成したポリイミド前駆体の拡散により形成された「拡散層」よりなり, 拡散層の検知をもって銅マイグレーションの発生とみなすことができた. カルボキシル基をもたないすでにイミド化されたポリイミドフィルムへの銅蒸着により得られた (ポリイミド/銅) 2層基板においても銅マイグレーションは見られなかったが, 溶媒の極性が低い場合にも銅マイグレーションは発生しなかった. 従来の非プロトン系極性溶媒を用いた系では銅マイグレーションが発生したのに対し, 近年見いだされたプロトン系非極性溶媒を用いた系では銅マイグレーションは見られなかった. これはポリマー成分の銅との錯体形成能が, 0ないしは低い場合には界面からのポリマーの拡散が起こっても, 銅がそれに伴ってマイグレートしないことによるものと考えられる.

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