高分子論文集
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6-ジアリルアミノ-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオール真空蒸着被膜の鉄表面への吸着機構
鈴木 一孝森 邦夫叶 榮彬平原 英俊
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2003 年 60 巻 3 号 p. 108-114

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抄録

真空蒸着法により, 吸着水の付着する未清浄化鉄表面と真空加熱排気処理により除去処理した鉄表面にアルキル基とアリル基を有するトリアジンチオール化合物の被膜を作製し, その吸着性と反応機構について調べた. トリアジンチオール化合物は6-ジブチルアミノ-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオール (DB) と6-ジアリルアミノ-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオール (DA) である. DA被膜はDBより表面清浄度に関係なく吸着確率が高く, 吸着水が多い未清浄表面ほど, 吸着確率の差が大きくなることがわかった. アリル基を有するDAは未清浄表面で, メタノール溶媒に不溶化する化学吸着・反応生成物を形成しやすいことが膜厚測定とAFMの観察により明らかとなった. 未清浄鉄表面におけるDA被膜には, チオール基間でジスルフィド結合形成や, 鉄表面への化学吸着反応, あるいはアリル基とチオール基との付加反応, およびアリル基間での付加反応が起こっていることがFTIR-RASやXPSの解析からわかった. この反応機構は, 未清浄表面のオキシ水酸化鉄 (FeOOH) と, 蒸着によって飛来するDAとの分子衝突によるラジカル生成に起因し, 基板表面と分子間でのラジカル反応が支配的であると提案された.

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© 社団法人 高分子学会
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