高分子論文集
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新しい血液適合性高分子の設計とバイオメディカルインターフェイスの構築
田中 賢
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2003 年 60 巻 8 号 p. 415-427

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抄録

ポリ (2-メトキシエチルアクリレート) (PMEA) 表面は血液細胞をはじめ各種血液適合性マーカーに対し活性化が低く, 優れた血液適合性を発現した. PMEA表面は血漿タンパク質の吸着量や吸着タンパク質の変性が小さく, 吸着タンパク質が脱離しやすいことから, タンパク質との相互作用が弱いことがわかった. PMEAと吸着タンパク質との界面に存在する水分子に着目して, 飽和含水PMEAのDSC測定の結果, -100℃からの昇温過程で水のColdcrystallization (CC) に由来するシャープな発熱ピークが-42℃に安定して観察された. 飽和含水量とDSCによる各転位における熱量から, ポリマー中に存在する水を自由水, 中間水, 不凍水と分類した. ここでは中間水を低温結晶化するCCとして観測される水と定義した. また, このCCは生体適合性に優れている, 多糖, ゼラチン, ポリエチレングリコールに観測された. 一方, 適合性の劣るポリ (2-ヒドロキシエチルメタクリレート) (PHEMA) やPMEA類似体では, CCは認められなかった. 以上の結果から, 中間水の存在が生体適合性発現のキーポイントになると推察した. さらに, PMEAと自己組織化材料を組み合わせた新しいバイオメディカルインターフェイスについても述べる.

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