ことば
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個人研究
『日本国憲法を口語訳してみたら』―塚田薫―に見る若年層の「話しことば」文体
小林 美恵子
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2017 年 38 巻 p. 29-45

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抄録

日本国憲法口語訳の「話しことば」文体について分析・記述する。口語訳には、「国民」を「俺」とし、「お前」の呼びかけを用いること、文末に「命令」「禁止」「依頼」「許可」「勧誘」など訴え型の述語形式が使われ、「よ」「ね」「な」「ぜ」などの終助詞が多用されていることなど、憲法原文にはない特徴が見られる。これらは、20代男性の訳者(話者)の立場から、同年代以下の親しい友人などを相手として想定した「話しことば」文体で書かれていることによる。それは憲法に対する親しみを喚起しているが、同時に口語訳されることによる解釈の制約や限界もある。

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© 2017 現代日本語研究会
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