2020 年 41 巻 p. 106-121
本研究は、日常会話でほめことばとして「すごい」が使われる場合、使い方にどのような特徴があるのかを『日本語日常会話コーパス』モニター公開版を用いて明らかにすることを目的とする。分析の結果、ほめことばとして「すごい」を使用する際、相手、表現方法、表現意図に特徴があることが分かった。まずほめる相手について、「すごい」は同等以上の立場の者が同等以下の立場の者をほめるときに使われるだけではなく、目下の者が目上の者をほめるときにも使われる。次に表現方法について、相手に「すごい」とだけ言ったのでは何を評価しているのかが伝わらないため、「すごい」を使用する際には評価する点について言及する、「すごい」を繰り返し言う、「すごい」の前後に相手の名前を呼ぶという特徴がある。さらに表現意図について、「すごい」は「ほめ」を表しているのであるが、相手をはげます、相手のほめてほしいという期待に応える、他の話者の「ほめ」に同調するときにも使われるということが分かった。