介護現場の外国人従事者に対する介護用語の効果的な指導が模索されているが、特に難解とされる介護用語の実態の究明が急がれている。本稿では難解な介護用語の代表ともいえる「褥瘡」とその和語「床ずれ」について、また、「褥」の字の明治以来の医療看護分野での使われ方を検証し、その実際から習得の問題点を考察した。その結果、本来2種類あった「褥瘡・蓐瘡」の表記が、明治初期の「蓐瘡」優勢の時期を経て大正期には「褥瘡」に集約されて現在に至っていること、明治大正期の書籍では漢字語にルビを振るものが多く教育上の配慮があったこと、また、看護技術を示す用語に「褥」のつく熟語が多かったこと、などが明らかになった。現在では「褥瘡」の2字とも常用漢字表表外字で、なじみが薄くなり、「褥」のつく熟語も激減した。漢字の環境の変化によって、「褥瘡」の習得は明治期より難解になっている。