2023 年 44 巻 p. 91-108
本稿では主に中国語母語話者日本語学習者の「を」の不使用と過剰使用の誤用データを手掛かりに、前接詞が助詞の場合における、「を」の後接の可否および学習者の誤用要因について検討した。結果は以下のとおりである。①学習者の過剰使用は主に格助詞ととりたて助詞に集中しており、不使用は主に並列助詞ととりたて助詞に集中している。②格助詞、並列助詞の誤用は主に学習歴が短い学習者に集中しているが、とりたて助詞の誤用は学習歴の増加につれ、誤用率も上がっていく。③格助詞と並列助詞の場合、学習者の誤用は主に文法ルールを理解できていないことが原因である。④とりたて助詞の場合、学習者の誤用要因は文法ルール違反、名詞成分と述語との関係の混乱、「を」の後接の有無と文体との関係の不理解、使用条件の不理解という4点が考えられる。