寿岳章子の研究テーマのひとつにオノマトペがあり、1950年代には積極的にオノマトペの論考を発表していた。その中ではオノマトペの表現効果、表現者、オノマトペの変化などについて論じている。一方で同時代に書かれた寿岳の日記には多彩なオノマトペが使われている。この日記のオノマトペ使用の実際を調査した結果、論文ではオノマトペには新擬声語が生まれやすい、本来の用法とずれた用法に創意が見られるなどの指摘があるが、実際の日記の中にそうした実例が見られるなど、いくつかの点で、論文中で示された寿岳のオノマトペ観が反映されていることが明らかになった。本稿は紙幅の都合上(上)(下)に分けるが、(上)では、寿岳の論文からみる寿岳のオノマトペ観を整理し、「寿岳日記」の前半と後半のオノマトペ使用を他の作家の作品と比較しながら論じる。