抄録
近年のドイツにおける地域鉄道政策は、「生存配慮(Daseinsvorsorge)」という概念によって方向性が規定されてきた。本研究は、その生成から今日に至るまで、同概念に地域鉄道政策との関係でいかなる意義が付与されてきたのかという点を検証した。これにより、「生存配慮」の概念は政治的な文脈も反映して時代によって相違する位置付けがなされてきたものの、行政が地域鉄道に関与する根拠としては概ね機能してきたことが明らかとなった。一方で、同概念そのものが地域鉄道への公的財源の充当を必然化するものではなく、その実現には政治による議論が不可欠であること等も示した。