交通学研究
Online ISSN : 2434-6179
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最新号
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  • 安達 晃史, 水谷 淳, 平田 一彦, 藤井 成弥
    2023 年 66 巻 p. 23-30
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、COVID-19が都市鉄道の通勤需要に与えた影響について3種類の定量分析を行い、以下の4点を明らかにした。①テレワークの進展による出勤率の低下が都市鉄道の通勤需要減少と連動している、②通勤距離が長くなるほど、テレワークの選択確率が上がる、③通勤距離が長くなるほど、通勤手段の変更は難しくなる、④通勤手当支給の変化はテレワークの選択や通勤手段の変更と強く相関している。
  • 中村 知誠
    2023 年 66 巻 p. 31-38
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    先進諸国ではインフラの老朽化が急速に進行しており、点検技術の開発など老朽化問題に焦点を当てた研究が多く蓄積されている。一方、近隣自治体との関係に着目してインフラの健全性を定量的に分析した文献は、管見の限りきわめて少ない。本稿では、北海道内の市町村管理の橋梁を対象として、インフラの質の維持に寄与する要因を明らかにし、近隣自治体との相互関係(「近隣効果」)がインフラの健全性に及ぼす影響を分析した。分析から、特別豪雪地帯では維持補修費の多さと安定性が健全性に正の効果を与えることや健全性に対して正の「近隣効果」が発現することなどが明らかになった。
  • 河﨑 玲, 秋山 孝正
    2023 年 66 巻 p. 39-46
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    近年のETCなどの情報通信技術の普及によって、都市高速道路では多様な料金設定が可能となり、従来の償還主義に基づく料金設定に対して、交通需要に対応した弾力的料金の設定が期待されている。本研究では、需要対応型の料金設定として、路線別料金設定の方法を提案する。すなわち、従来の都市高速道路における全線一律の対距離料金設定に対して、空間的な交通需要に対応可能な「路線別料金」の交通調整効果(有効性)と現実的な設定可能性(実用性)について、需要変動型利用者均衡配分モデルにより定量的に検証する。
  • 西澤 宏員
    2023 年 66 巻 p. 47-54
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿では、安全への取組として浸透しつつあるSafety-ⅠとSafety-Ⅱをsharp endの視点から考察し、問題を整理する。まず、Safety-ⅠとSafety-Ⅱについて歴史的背景を踏まえて解説する。次に、blunt endの指示がsharp endのパフォーマンスに与える影響を新たに作成した簡単なモデルを用いて分析する。そして、blunt endの指示の矛盾やリソース不足によりsharp end がパフォーマンスの調整を強いられていることから、それを引き起こすblunt end内での不十分な合意がsharp endから見た現状の安全マネジメントの問題であるとの結論を得た。
  • 那須野 育大, 安達 晃史, 湧口 清隆
    2023 年 66 巻 p. 55-62
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、赤字路線活性化の可能性について、沿線居住者中心の「局地的視点」にとどまらず、沿線外居住者を考慮した「広域的視点」に着目して考察した。まず、クラウドファンディングによる鉄道の非利用価値推計について検討し、嵯峨野観光鉄道の事例から、調達資金の多くが非利用価値である可能性を示した。次に、直接利用価値の観点から観光列車導入の試算を行い、数千万円から1億円程度の年間収益を実現できることが分かった。これらは、これまで計測されなかった新しい利用価値・非利用価値といえる。赤字路線の存廃・活性化の検討にあたり、こうした新たな価値により一層着目すべきである。
  • 高尾 美鈴, 中村 知誠, 後藤 孝夫, 中村 彰宏
    2023 年 66 巻 p. 63-70
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、Webアンケート調査の集計結果を用いて実証的に分析し、テレワーク実施による観光行動への影響を定量的に把握することである。本研究ではWebアンケート調査を実施し、 ①時間制約の仮説である「テレワークを実施すれば、もともと通勤時間が長い旅行者ほど観光行動を変更する(仮説1)」ことと、②場所の制約に関する仮説である「テレワークを実施すれば、もともと場所の制約が大きい旅行者ほど観光行動を変更する(仮説2)」ことを検証した。分析の結果、テレワーク実施によって時間制約や場所の制約の緩和があることが示唆された。あわせて、旅行経験のある旅行者のなかで①通勤時間が長く時間制約の強い人ほど、②小中高生など場所の制約の強い人が同行者であるほど、テレワーク実施で観光行動を変更させる可能性が高いことが明らかとなった。
  • 小熊 仁, 西藤 真一, 引頭 雄一, 福田 晴仁
    2023 年 66 巻 p. 71-78
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本論文では沖縄県内離島のうち、サービスの条件が異なる3つの離島(多良間島・波照間島・伊平屋島)を対象にCVMを利用し航空サービスが住民に及ぼす経済価値とその価値構成を定量的に計測した。分析の結果、これらの島の住民には少なくとも月間約3~7万円、年間約40~80万円程度の経済価値がもたらされる可能性があることがわかった。また、これらの島の住民は航空サービスの存在から及ぼされる便益の程度こそ異なるものの、サービスの直接的な利用やサービスの利用可能性の確保、ならびに他者や後世が利用できるという環境の整備を評価していることが判明した。
  • 古畑 真美
    2023 年 66 巻 p. 79-86
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    1963年「航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約」(東京条約)を改定するための議定書である2014年モントリオール議定書が2020年1月に発効した。この改正は、現代の航空産業が抱える深刻な問題となっている「規則に従わない乗客/手に負えない乗客」(Unruly Passenger、Disruptive Passenger)に適切に対処することを目的として採択されたものである。主な改正内容は、裁判管轄権の拡大と機内保安官(IFSO)の地位の新設である。本稿では、2014年モントリオール議定書による改正東京条約のポイントを解説するとともに、その効果について検証する。
  • 橘 洋介
    2023 年 66 巻 p. 87-94
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    近年、公共交通の再生を企図してわが国においてもMaaS(Mobility as a Service)の導入が一部で謳われている。そこで本論ではMaaSが如何なる概要であるのかを説明し、MaaSが一部企業に独占力を生み出し、非効率な補助を生み出す恐れがあるという、制度設計上の留意点を明らかにする。その上で、公共交通の再生に対してその効果は限定的であり、MaaSが存立可能であるのは大都市の公共交通か観光交通にほぼ限定されることを示す。一方で、公共交通の再生を期待するような地方都市にMaaSを導入しようとすると、その弊害が無視できないことを明らかにする。
  • 秋山 孝正, 董 亮
    2023 年 66 巻 p. 95-102
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    都市交通へのMaaSの導入が進展している。一般にMaaSは、交通情報の統合と交通機関のシームレス化により都市の移動の利便性を向上させる。本研究では、統合的交通情報とシームレス化を踏まえたMaaS型の情報(統合型交通情報)に関して、交通行動に対する影響を定量的に分析する。このため、現実交通行動に対する交通情報のインパクトを多面的に分析する。すなわち、仮想的な交通経路提案が有効に機能する場合を検証する。つぎに公共交通機関と自動車利用の関係から、交通行動分析モデルを構成する。特にMaaS型の交通サービス(料金統合・サブスクリプション型料金・シームレス交通)に関する影響を交通機関分担の視点から検証する。これらの分析から最終的にMaaS型統合情報の利用可能性について考察を行う。
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