交通学研究
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  • 土方 まりこ
    2018 年 61 巻 p. 37-44
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    近年のドイツにおける地域鉄道政策は、「生存配慮(Daseinsvorsorge)」という概念によって方向性が規定されてきた。本研究は、その生成から今日に至るまで、同概念に地域鉄道政策との関係でいかなる意義が付与されてきたのかという点を検証した。これにより、「生存配慮」の概念は政治的な文脈も反映して時代によって相違する位置付けがなされてきたものの、行政が地域鉄道に関与する根拠としては概ね機能してきたことが明らかとなった。一方で、同概念そのものが地域鉄道への公的財源の充当を必然化するものではなく、その実現には政治による議論が不可欠であること等も示した。
  • 眞中 今日子, 中村 彰宏, 加藤 一誠
    2018 年 61 巻 p. 45-52
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、65歳以上の高齢ドライバーが運転し、運転免許を自主返納しない理由の一端を明らかにすることにある。全国規模で実施したWEBアンケート調査の個票データにもとづき、高齢者の運転行動と高齢者自身の運転以外の交通手段や運転目的の関係を分析した。分析からは、自身で運転する高齢者は公共交通へのアクセスが不便であり、タクシーを含めた公共交通の利用機会が乏しい立場に置かれており、運転可能な若年層との同居は運転と無関係であることが示された。そして、高齢者は買い物・若年層の送迎を目的に自身で運転して外出する機会も多い。このことは、ICTを活用した宅配サービスやスーパー等の商品配達サービスの浸透や若年層の移動手段の確保が、高齢者の運転機会の減少に有効であることを示唆している。
  • 大瀧 逸朗, 今西 芳一, 内山 直浩, 根本 敏則, 宮武 宏輔
    2018 年 61 巻 p. 53-60
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    本研究では、首都高速道路において混雑課金制度が導入された場合の影響について、余剰の観点から分析を行い、混雑課金の効果を検証した。具体的には、都心に向かう交通による混雑状況が激しい中央環状線の内側を走行する車両に対して、通行料金に上乗せして混雑料金を徴収することを想定し、都心を通過する車両が環状道路を利用することによって都心の混雑状況が緩和され、社会的余剰(消費者余剰と生産者余剰の和)が改善される状況を分析した。さらに、東京オリンピック・パラリンピック、及び、人口減少社会といった、現在よりも需要が大きく変動した場合の混雑課金の効果について検証を行った。
  • 髙橋 達
    2018 年 61 巻 p. 61-68
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    欧州の主要空港を中心に離着陸料を用いて、低騒音機を誘導する試みが行われている。本論は騒音性能による離着陸料の差別化と航空会社の航空機選択の関係を分析する。空港の運航情報と航空機の性能データを用いた分析の結果、騒音性能による離着陸料の変化率と料金水準が最も高いヒースロー空港において、航空会社は騒音性能の高い機体を使用していることが明らかになった。一方で、スキポール空港やシャルル・ド・ゴール空港の離着陸料は、騒音性能により料金を差別化しているものの、航空会社は他の空港と比較して低騒音の機体を使用していない。この結果は、離着陸料の差別化により低騒音機を誘導するためには、高水準の離着陸料を騒音性能により大きく差別化する必要があることを示唆している。
  • 亀山 嘉大
    2018 年 61 巻 p. 69-76
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    本稿では、佐賀空港のLCC利用者の訪日外国人旅行者を対象としたアンケート調査で得たサーベイデータをもとに、プロビット分析で個人旅行やリピーターといった旅行形態の違いと訪日前の情報収集の関係を分析した。分析結果から、1)個人旅行の意思決定は、訪日回数、情報源として、ガイドブック、日本の行政など公共機関のホームページ(HP)、SNS、友人・知人の紹介、ブログ検索と関係があること、2)個人旅行のリピーターの意思決定は、訪日回数、情報源として、ガイドブック、日本の行政など公共機関のHP、日本の旅行関連の民間企業のHP、SNS、友人・知人の紹介、ブログ検索と関係があることを確認した。
  • 鈴木 裕介, 酒井 裕規, 湧口 清隆
    2018 年 61 巻 p. 77-84
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    近年、わが国に寄港する外国及び日本船社のクルーズ船が大幅に増加している。2016年にはクルーズ船の寄港が年間2,017回となり、2010年と比べて2倍以上に増加、クルーズ船による訪日外国人数も200万人を超える勢いを見せている。しかしクルーズ船は「発電所を搭載する洋上に浮くホテルリゾート」と言われ、クルーズ船から排出される大気汚染は、港湾周辺の環境へ大きな影響を与えているとされる。しかし貨物船と比較してクルーズ船の環境汚染に関する議論は十分ではない。そこで本研究は2016年において最もクルーズ船の寄港が多い博多港を対象に、クルーズ船による大気汚染の外部費用を推定した。その結果、2016年に博多港に寄港したクルーズ船により、6億円程度の大気汚染の外部費用が発生していることが明らかとなった。これはクルーズ船1隻あたり194万円、乗客定員1人あたり662円となる。特に夏期は気候的にも恵まれていることからクルーズ船の寄港が多く、さらに冷房などの使用に伴いクルーズ船の発電機の負荷も高まることも重なり、その影響が大きくなっていることが明らかとなった。今後さらなるクルーズ船の寄港の増加が予想される中で、国や地方自治体はクルーズ船からの大気汚染の影響を抑制するために、陸上電源などのインフラ整備や大気汚染物質の排出規制などの対策を行う必要がある。
  • 湧口 清隆, 酒井 裕規
    2018 年 61 巻 p. 85-92
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    近年、外国船社が運航する外航クルーズ客船による訪日外国人観光客が急増し、2016年には約200万人に達している。外航クルーズ客船の寄港に伴い、買物などの経済効果が期待できる一方で、貸切バスによる渋滞や特定観光地の混雑、客船による大気汚染や水質汚染、騒音、ゴミなどの環境問題が発生し始めている。本稿では、各港湾が公表する又は筆者が請求して入手した2014年~2016年の3年間の月次寄港数データを用いて、2015年、16年に年間20隻以上の外航クルーズ客船の寄港があった港湾をクラスター分析により分類し、外航クルーズ船の寄港の集中がどのように負の影響を発生させるのかを分析した。
  • 秋山 孝正, 井ノ口 弘昭, 保田 義之
    2018 年 61 巻 p. 93-100
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    超高齢社会における都市鉄道需要の長期的な変化に対する対応が課題となっている。ここでは、都市鉄道需要に関して、鉄道駅乗降客数に着目して、鉄道サービスと都市活動の視点から分析を行う。すなわち、鉄道駅とまちづくりに関する既存研究を参考にして(秋山・奥嶋・北村2008)、都市鉄道需要の時系列的変化に着目した検討を行う。このとき、都市鉄道需要変化の分析には、2種類の知的情報処理技術を用いる。まず、都市鉄道需要の変動パターン(増加・無変化・減少)を考えるため、段階的判定手順を明示的に表現可能な方法として、機械学習におけるファジィ決定木手法を導入する。さらに、都市鉄道需要変化に対して、ファジィ推論を用いた定量的推計モデルを構築する。最終的には、都市鉄道需要変化のメカニズムを整理するとともに、都市圏における主要要因変化が都市鉄道需要に与える影響程度を実証的に検証する。
  • 岸 邦宏
    2018 年 61 巻 p. 101-108
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    函館・道南地域における北海道新幹線開業効果が持続するためには、観光客がまた訪れることが重要となる。そこで、観光客の再訪意識を分析するために、函館市に来訪した観光客を対象に、観光の満足度や来訪意識に関する意識調査を行った。初めての来訪者、リピーターともに今後も函館にまた来たいと考える人の割合は約8割に上った。一方、観光の満足度と再訪意識の関連を分析すると、函館までの交通手段の満足度は、函館での観光の満足度よりも低い傾向にあるが、再訪意識には函館での観光そのものの満足度が影響を与えていることが明らかになった。
  • 山口 勝弘
    2018 年 61 巻 p. 109-116
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    わが国における都市間交通について航空と鉄道の需要に係るロジット・モデルと航空運賃に係るクールノー・モデルを組み合わせて分析したところ、国内航空市場においては、新幹線等の都市間鉄道をバックボーンとして、航空市場内の寡占的競争のみならず、鉄道の利便性についても航空運賃の設定に影響を及ぼしていることを導出した。推定したモデルから航空の自己価格弾力性が算定でき、それによれば鉄道の利便性の高い路線は弾力的であるのに対しそうでない路線は非弾力的であることを確認した。また、羽田空港の着陸料軽減措置及び国内線発着枠配分基準の検討に資するため、路線ごとの効用水準を推計した。
  • 堂前 光司, 松本 秀暢
    2018 年 61 巻 p. 125-132
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    Porter(1998)以降、産業クラスターの概念が、我が国でも地域産業政策の新たな視点として注目されてきた。航空産業については、愛知県を中心とした中部地域を対象として、2011年に国際戦略総合特区が指定された。本研究では、我が国における航空機・同附属品製造業の空間的集積を市郡レベルで概観した上で、航空機附属品製造業に焦点を当て、集積の経済を検証した。特に、愛知県については、中部国際空港開港と国際戦略総合特区指定の効果も考察した。分析結果からは、地域特化の経済(MAR型外部性)の存在が示唆されたが、愛知県に関しては、都市化の経済(Jacobs型外部性)の特性を示す結果となった。
  • 醍醐 昌英
    2018 年 61 巻 p. 133-140
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    ロンドンでは空港容量の制約が経済成長を阻害するとの問題意識から容量拡大が検討されてきた。複数案からガトウィック空港への第2滑走路の設置、ヒースロー空港の北側滑走路の延伸、ヒースロー空港への第3滑走路の設置の3案に絞られ、最終的に環境対策・空港アクセス策・雇用対策のパッケージである第3滑走路案が承認された。この評価の判断基準は、空港アクセスなどの接続性、拡張から生じる経済的便益、騒音や大気の質など地域環境への影響、実行可能性とレジリエント性である。
  • 岡本 直久, 佐藤 慧一
    2018 年 61 巻 p. 141-148
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    我が国ではPPP・PFI推進の一環として公共施設等運営権制度(コンセッション)の導入により、民間による空港の上下一体運営が開始された。本研究では英国・ロンドン都市圏空港における容量拡大に関する議論の変遷を整理することで、民間運営の空港における大規模投資実施の際の官民の役割・責任の在り方や、そのスキーム等に関して明らかにした。その上で、我が国の政策や制度の現状との比較を行ない、今後議論すべきと考えられる点として、大規模投資の費用負担のあり方、そして空港コンセッション進展後の政策展開の在り方、の2点を指摘した。
  • 脇嶋 秀行, 松井 竜太郎, 後藤 孝夫, 根本 敏則
    2018 年 61 巻 p. 149-156
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、道路損傷の外部性の視点を踏まえて、大型車が道路構造物へ与える影響に着目して、諸外国でも導入されている損傷者負担に応じた高速道路料金の日本への導入について検討する。具体的には、首都高を念頭に置いた、相対的に損傷による費用が高い都心部の高速道路(全区間が橋梁区間)経由と圏央道を念頭に置いた、相対的に損傷による費用が低い郊外部の高速道路(全区間が土工区間)経由の代替的な2区間の交通に単純化する。そして、重量料金モデルを使用して、重量料金導入前後の単純化した2区間の交通量の変化と2区間合計の年間管理費の変化を試算する。
  • 湧口 清隆
    2018 年 61 巻 p. 157-164
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー
    本稿では、湧口(2001a)が整理・分析し、実際に計測した「オプション価値」に関する議論を再検討するとともに、主に2000年代以降に蓄積された交通サービス、環境分野での計測事例や、オプション価値と利用価値との関係に関する知見、リアル・オプション研究のなかで培われた確率変化と事業価値の変化との関係に関する知見を考慮しながら、「オプション価値」の理論的な意味を検討した。その結果、アンケートで複雑な質問を設定し厳密に「オプション価値」を計測しなくとも、単純に「オプション価格」を問うことで「オプション価値」を近似できる可能性を指摘した。
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