交通学研究
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クルーズ船による大気汚染の影響-博多港のケース-
鈴木 裕介酒井 裕規湧口 清隆
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2018 年 61 巻 p. 77-84

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抄録

近年、わが国に寄港する外国及び日本船社のクルーズ船が大幅に増加している。2016年にはクルーズ船の寄港が年間2,017回となり、2010年と比べて2倍以上に増加、クルーズ船による訪日外国人数も200万人を超える勢いを見せている。しかしクルーズ船は「発電所を搭載する洋上に浮くホテルリゾート」と言われ、クルーズ船から排出される大気汚染は、港湾周辺の環境へ大きな影響を与えているとされる。しかし貨物船と比較してクルーズ船の環境汚染に関する議論は十分ではない。そこで本研究は2016年において最もクルーズ船の寄港が多い博多港を対象に、クルーズ船による大気汚染の外部費用を推定した。その結果、2016年に博多港に寄港したクルーズ船により、6億円程度の大気汚染の外部費用が発生していることが明らかとなった。これはクルーズ船1隻あたり194万円、乗客定員1人あたり662円となる。特に夏期は気候的にも恵まれていることからクルーズ船の寄港が多く、さらに冷房などの使用に伴いクルーズ船の発電機の負荷も高まることも重なり、その影響が大きくなっていることが明らかとなった。今後さらなるクルーズ船の寄港の増加が予想される中で、国や地方自治体はクルーズ船からの大気汚染の影響を抑制するために、陸上電源などのインフラ整備や大気汚染物質の排出規制などの対策を行う必要がある。

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