2021 年 64 巻 p. 139-146
本稿では、2007~17年における都道府県のパネルデータを活用して、インバウンド振興の目標値である訪日外国人旅行数が地域経済に寄与してきたのかどうかを検証した。「訪日外国人旅行者の地域(観光)需要の大きさ」である観光マーケットポテンシャル(TMP:Tourism Market Potential)によって、訪日外国人旅行者数を単純な規模であるGrossの効果ではなく、発地から着地へのアクセシビリティを内包したNetの効果を計測し、TMPと観光政策が都道府県の生産性と賃金にどのような影響を与えてきたのかを分析した。推定結果から、TMPと観光政策はどちらも都道府県の生産性と賃金にポジティブな影響を与えていることが示された。一方で、パラメータ推定値の比較から、TMPや観光政策の効果は小さいことが示された。