船体操縦流体力の非線形項(非線形成分)の表現法の一つとして, 船長方向の各断面の横抗力係数に基づいた, いわゆるcross-flowモデルが便利に用いられている。しかし, その取扱いの妥当性や精度については, これまで十分な検討が行なわれてきたとは言い難い。ここでは回頭運動している船体を対象として, 3種の船型について行なった分割模型試験の結果を示す。ただし, 横流れ運動を伴わない純粋の回頭運動の場合を考え, かつ通常の大きさの操縦運動の範囲を対象としている。横力の非線形成分の船長方向の分布の特性, およびcross-flowモデルとの対応度について考察した。その結果, 次のことが明らかになった。分割要素に働く横力は回頭角速度の2次多項式でほぼ近似できる。横力の非線形成分の船長方向分布については, cross-flowモデルの取扱いは概して船体中央に近い位置ほど過小評価された値を与えること, などである。