関西造船協会講演概要集
平成14年度秋季造船三学会連合大会(内関西造船協会)
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 勝井 辰博, 姫野 洋司, 田原 裕介
    p. 1
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は高レイノルズ数を視野に入れた平板の摩擦抵抗値について再検討を行ったものである。CFDの発達により、実船周りの流場解明のための研究が進みつつあるが、最も基本的な摩擦抵抗の検証でさえ、Schoenherr等の実験式に頼らざるを得ない状況にある。これらの実験式も高レイノルズ数のデータを多くは取り込んでおらず、その精度には疑問が残る。さらに近年、従来信頼が置かれてきた模型船レベルのレイノルズ数(Rn=106程度)でのSchoenherrの摩擦抵抗係数が過大に見積もられているという指摘もある。本研究はこのような状況をふまえ、平板乱流境界層内の流速分布に関する最近の実験結果からの知見を取り入れ運動量方程式に基づいた厳密な数値計算を実施した。また計算結果について種々の実験式や実験結果との比較を行った。
  • —タンカー船型による模型試験と実船性能推定法について—
    勝井 辰博, 岡本 幸彦, 笠原 良和, 下山 敬次, 岩崎 泰典, 副島 俊二, 平山 明仁
    p. 2
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は船舶の摩擦抵抗低減法として空気膜法(船体を空気膜で覆う手法)を取り上げ、模型試験によってその効果を確認し、実船でどの程度の効果が見込めるかについて調査を実施したものである。対象船型としてタンカーを選び、模型船の船底部に空気膜を発生させ、平水中および波浪中航走時の空気膜の様子の観察と抵抗試験を実施した。また、16mの大型模型船を実船相当の船速で航走させたときの空気膜の摩擦抵減効果(別論文で発表)から、実船のタンカーでの摩擦抵減効果を推定する手法を提案し、その算定を行った。
  • 高橋 孝仁, 角川 明, 牧野 雅彦, 児玉 良明
    p. 3
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    マイクロバブル法の実船への適用性を検討するために、マイクロバブルの尺度影響調査として、400m水槽において長尺平板船の曳航実験を行った。長さ12mの平板船を用い、抵抗低減効果は特に壁近傍のボイド率と強い相関を持つことを確認した。長さ50mの平板船を用い、速度7m/sにおいて最大摩擦抵抗低減率は約22%であり、抵抗低減効果は船首端から40m下流でも若干みられ、実用化の可能性を確認した。境界層厚さの相違に対し、摩擦抵抗低減効果の差はほとんど見られず、壁付近のボイド率が重要であることがわかった。以上の実験により、実船における吹き出し位置や吹き出し空気流量の推定の基礎となるデータを取得できた。
  • 田中 寿夫, 戸田 保幸, 肥後 清彰, 山下 和春
    p. 4
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    実船において塗膜面に作用する摩擦抵抗と塗膜面の性質·形状の相関、特に塗膜の種類·粗度が摩擦抵抗に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした実験的研究を実施した。実船レイノルズ数に相当する状態で、塗膜面に作用する摩擦抵抗を計測するために、新たに回転円筒型の摩擦抵抗計測装置を開発した。実船相当速度の流水中に長期間曝露した自己研磨型塗膜·撥水性塗膜の摩擦抵抗を本装置で計測するとともに、表面粗度の経時変化を計測することにより、これら塗膜面の表面状態と摩擦抵抗の関係を明らかにした。また実験結果を用いて実船における塗膜面に作用する摩擦抵抗の推定方法を提案した。
  • 戸田 保幸, 鈴木 敏夫, 湯田 紀男, 岩下 智也, 李 允石, 角川 明, 高橋 孝仁, 東島 鎮〓
    p. 5
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    日本造船研究協会第239研究部会で実施した実船実験に向けて開発した局所せん断力計に関してのべる。局所せん断力計設計段階での考察や、原理·製作について述べ、また結果のとして1級教習低を用いての海上実験や海上技術安全研究所での長尺模型による水槽実験等による予備的検討について示す。これら予備実験の結果、実船においても十分計測可能であると判断し、実船実験に用いた。青雲丸を用いたマイクロバブルによる摩擦抵抗低減に関する実船実験において、実際に開発したせん断力計の計測結果について示す。また実船におけるせん断力計測結果の時系列から周波数解析や度数分布解析を行い船体運動との関連なども調査した。
  • 万 碧玉, 西川 栄一, 内田 誠
    p. 6
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    実海域を航行する船舶の推進性能は汚損や気象海象など各種要因で変動悪化する. したがって船舶の推進性能の現在状態をリアルタイムで把握できれば, 燃料削減など適切な運行管理のために有用情報になると期待される. 現在アブログデータを利用した就航中船舶の推進性能分析は船会社などで盛んに行われている. しかし性能に関係する計測データは, 船速, 燃料消費量, 及びすべての船ではないが軸トルクに限られているから, 結局すべての要因かつ合成された燃料消費の変化しか把握できないのが現実である. したがって, 推進性能の悪化が主に汚損によるという前提の上で, 船体抵抗とプロペラ性能の変化個別に把握することができれば, 運行管理上有用な情報となるだろう. 本研究は, 汚損プロペラの性能解析を利用して, 船体抵抗とプロペラ性能を個別に把握する手法を研究する. それに基づいて, 実海域航行中の船舶の汚損などによる表面粗度変化による単独プロペラ性能変化を推定して, 航行中船舶の推進性能をリアルタイムで把握できるモニタリング·システムを開発しようというものである。
  • 増山 典, 野本 謙作, 桜井 晃
    p. 7
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    千石積級菱垣廻船が大阪市によって原寸大で復元建造され、1999年7, 8月に海上帆走試験を行った。帆走試験では定常帆走時の船速や船体姿勢などを計測するとともに、下手回し時の操縦運動のような動的な計測も行い、我が国を代表する往年の大型帆船の帆走性能を明らかにした。本研究ではこの船の操縦運動性能をより詳しく解析するために、風上へ間切って帆走する際の折り返し点で行う「下手回し」操縦運動を、数値シミュレーションによって求める方法を示すとともに、実船計測データと比較した。具体的には、実測された舵角の時系列データを入力として、運動方程式から船体姿勢や航跡を求め、これらを実測値と比較検討した。シミュレーション結果は実船データとよく一致し、これまで文献によるしかなかった歴史上の帆船の、操縦運動の解析手法を確立することができた。
  • —回頭運動の場合—
    湯室 彰規
    p. 8
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    船体操縦流体力の非線形項(非線形成分)の表現法の一つとして, 船長方向の各断面の横抗力係数に基づいた, いわゆるcross-flowモデルが便利に用いられている。しかし, その取扱いの妥当性や精度については, これまで十分な検討が行なわれてきたとは言い難い。ここでは回頭運動している船体を対象として, 3種の船型について行なった分割模型試験の結果を示す。ただし, 横流れ運動を伴わない純粋の回頭運動の場合を考え, かつ通常の大きさの操縦運動の範囲を対象としている。横力の非線形成分の船長方向の分布の特性, およびcross-flowモデルとの対応度について考察した。その結果, 次のことが明らかになった。分割要素に働く横力は回頭角速度の2次多項式でほぼ近似できる。横力の非線形成分の船長方向分布については, cross-flowモデルの取扱いは概して船体中央に近い位置ほど過小評価された値を与えること, などである。
  • 三好 潤, 烏野 慶一, 岡野 誠司, 前川 和義
    p. 9
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    著者らによる船体に働く操縦流体力を表現する成分分離型数学モデルは斜航流体力の解析から旋回流体力を推定できるという特長をもっている. 本論文ではこれまでに蓄積された流体力実験やCFD計算結果の利用を考えて, 限られた斜航角範囲の斜航流体力を成分分離型数学モデルで解析し操縦運動時の主船体操縦流体力の推定を試み, 少ない斜航角範囲の斜航流体力でも主船体操縦流体力を精度よく推定することができるか調べた. また流体力実験なしに船体主要目からの成分分離型数学モデルによる操縦流体力推定も試みた. これらを利用して操縦運動シミュレーションを行い斜航流体力の解析範囲と推定精度が及ぼす影響を検討した結果, 成分分離型数学モデルを用いることで限られた斜航角範囲の斜航流体力から大斜航角範囲の操縦流体力や操縦運動を精度よく推定することを示した.
  • —水波と浮体の数値シミュレーションに関する検討—
    末吉 誠, 内藤 林
    p. 10
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    近年新しく提案された流体の数値計算法の一種である粒子法(MPS法)による水波と浮体運動の数値シミュレーションに関する検討を行った。この計算手法は強非線形な流体現象に有効であることが示されてきている。実用的な有限領域内で実施する上記の計算において、その取り扱いが重要となる波の反射を無くすために、消波装置、あるいは波吸収装置をこの計算手法に取り込む方法を検討した。それらを踏まえて船腹に損傷破口を持つ2次元浮体の波浪中大振幅動揺に関して計算例を示す。
  • —実験的研究—
    山野 惟夫, 楠 芳一, 鞍谷 文保, 小川 武範, 池渕 哲朗, 舩野 功
    p. 11
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    幅の広い没水したトランサム船尾を持つ船舶が深い喫水で航行すると, トランサム船尾直後で前方への波崩れがしばしば発生し船体抵抗を大幅に増大させる。基本的なこの抵抗の減少策は船尾端形状の最適化である。本論文では, 船尾端形状を構成する要素の中からトランサム船尾船底プロファイル形状を研究対象としてとりあげる。この形状を設計する時に, 一つは, 所要のTKMを確保するために, 船尾端の最下点の高さが決まる。もうひとつは, プロペラ起振力を許容値以下にするために, プロペラ直上の船底高さが決まる。次に, これらの2点の間をどのような曲線で結ぶべきか?多くの設計者はこの部分に然程の注意を払っていないのが現状と思われる。しかし, 著者等のこれまでのトランサム船尾についての研究は, この部分の形状が上記の船尾端による抵抗と深く関係している事を示唆している。そこで, 本論文では, この部分の3つの基本的形状, すなわち「凹型」, 「凸型」, 「平型」について比較模型実験を行い, この部分の形状が, どのような形で, どの程度, 船尾端による抵抗に影響を及ぼすかを明らかにした。
  • 平田 信行
    p. 12
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    近年、計算機の発達に伴い、CFD技術を用いた形状最適化システムが流力設計に適用されるようになってきた。しかしながら、CFDの計算負荷は未だ大きく、最適化手法は最適解と計算負荷の観点から注意深く選ぶ必要がある。本研究では、遺伝的アルゴリズムと勾配法が使用できる船型最適化システムを開発した。このシステムは、船型形状変更ツール、格子生成プログラム、高効率NSソルバーと最適化手法で構成されており、3次元の薄い船の全抵抗最小化問題に適用した。その結果、遺伝的アルゴリズムは勾配法に比べて大域的な最適解を得ることができた。また、NS計算の計算回数も勾配法とほぼ同程度であり、今回実施した最適化問題に対して、遺伝的アルゴリズムの優位性を示した。
  • 舩野 功
    p. 13
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    著者は, これまで低ノイズプロペラの設計の合理化を主眼に置いて, CFDシミュレーション技術を活用したハイリースキュードプロペラの定常粘性流場解析法を示し, 更にこの解析法を活用して翼端渦キャビテーション(TVC)の初生キャビテーション数の推定法を示したが, さらに高性能な低ノイズプロペラの要件としてTVCの初生点が小さいこと, また, 仮にTVCが発生してもそのノイズレベルが低いことが必要である. 本研究では, 低ノイズ性能に影響を及ぼすであろうプロペラ幾何形状を変更したハイリースキュードプロペラを設計し, キャビテーション水槽にて初生キャビテーション数と水中ノイズを計測した. その結果により得られた知見とCFD解析による考察をふまえて, 低ノイズプロペラの設計指針を示す.
  • 平山 次清, 工藤 君明, 今井 康貴, 高山 武彦, 平川 嘉昭
    p. 14
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    排水量約一万トンの大型海洋地球研究船“みらい”の船底(喫水6.5m)に設置されたADCP(超音波(75kHz)式ドップラー流速分布計)格納箱下面の円形音響窓の保護用ポリエチレン板(音響窓とよぶ)が何回かの破損に見まわれている。本ではこの音響窓が破損する原因について1/10モデルの水槽実験および波浪中運動の理論計算の両面から検討した結果を示すもので、圧力の考え方に意外な盲点があったことを指摘するとともに破損防止対策をも示すものである。なお本検討結果は類似のシステムを使用している船舶にとっても有益であるばかりでなく流体による圧力の基本的性質を考える必要がある点で教訓的でもある。
  • 箕浦 宗彦, 内藤 林, 片岡 尚紀
    p. 15
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    船舶の運航性能の評価にとって, 波浪統計は重要である. 一般に, 波浪統計は, 過去の観測結果等をもとに有義波高と平均波周期の発現頻度がまとめられ, 数表として与えられている. これを解析的に扱いやすくすることを目的に, 従来から, 対数正規分布やワイブル分布などをあてはめた波浪統計量分布が提案されてきた. しかし, 対数正規分布やワイブル分布であることの理論的根拠はあまり明確ではない. 著者らは, 有義波高と平均波周期は, 長期的な観点からは, ある平衡点に回帰しながら変動することに基づいて, その変動をガウス分布の攪乱源をもつ確率微分方程式でモデル化し, その統計量分布(頻度分布)を理論的に示す. この分布の妥当性は, 実際に計測された有義波高と平均波周期を用いて評価される. さらに, 有義波高と平均波周期の時系列シミュレーションを示す.
  • 片山 徹, 田村 健太郎, 池田 良穂
    p. 16
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は, 滑走艇特有の不安定現象の1つである, 船首が没水しそのまま沈没に至るバウダイビングと呼ばれる現象について, その発生機構を解明し設計段階での評価手法を提案することである. まず模型船を用いたバウダイビングの計測を行い, バウダイビング発生時の船体と自由表面の相対位置関係について調査し, 何らかの外乱によって船首下げの姿勢となった船体が, そのまま沈没してバウダイビングが発生することがわかった. つぎに, バウダイビング発生時の船体と自由表面との相対位置に基づく定常流体力の計測を行い, その特性について調査した. その結果, 前進速度が高い領域では, 外乱により航走姿勢が大きく変化させられた時には, 元の航走姿勢に戻す流体力が働かず, 特に船首を下げた姿勢となった場合にはそのまま船首を下げながら沈下にいたる流体力が働くことが明らかとなった. さらに, この定常流体力を基にバウダイビングが発生する可能性のある航走状態を判断できる簡易評価方法を提案する.
  • —Total Evaluation Using Life Cycle Value Chain Model—
    ジャスワー , 池田 良穂
    p. 17
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    In the present study, a methodology for planning, evaluating, and measuring an advanced marine transportation system is proposed, which consists of four steps, planning, selecting, evaluating, and measuring. In the methodology, firstly, internal and external factors of an advanced marine transportation system are identified using Internal and External Factors Analysis Summary (IFAS and EFAS) models. Then, strategies for planning an advanced marine transportation system are formulated using Strength Weakness Opportunities Threat (SWOT) model. After that, an alternative advanced marine transportation system is selected using Priority model based on index value of each alternative in which the highest index value of alternatives is selected. The selected advanced marine transportation system is evaluated using Life Cycle Value Chain model by measuring value of each stage in its life cycle. The methodology is applied for planning, selecting, and evaluating an advanced LNG tanker in Arun, Indonesia-Osaka, Japan route. The obtained results are discussed and compared with the conventional one.
  • 松村 清重, 片岡 哲宏, 石橋 龍哉, 播本 瞳, 竹内 健
    p. 18
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/05/07
    会議録・要旨集 フリー
    閉塞環境下における操船者の心理感を、熱力学アナロジの観点から説明することを試みた。海域の閉塞性Pと自船の行動ボリュウムVを定義すると、操船者の受ける脅威感Tは、次元的関係からPVの関数となる。これは熱力学の状態方程式に相当する。操船タイミングの善し悪しと関係した効力感Wは熱力学的仕事で表すことができる。達成傾向を内部エネルギUないしは意志Qと見なすことによって、効力感を加えたエネルギ保存則から期待-価値論を説明できる。操船者の心理状態を表すために心理エントロピーの定義を示し、人の意志が冷めることを公理とした熱力学第2法則相当の心理機構を示した。応用例として狭水路航行時の船速が自発的に定まったり、ブレーキングの善し悪しがエントロピで説明できることを示した。
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