抄録
本論は,随伴変数法を用いてNavier-Stokes方程式の数値解に基づく2次元翼に働く揚力の感度解析を行った.随伴方程式の係数行列は,支配方程式の残差ベクトルの流場変数に対する変化率で与えられるが連続の式をそのまま用いる限り,随伴方程式の係数行列は対角成分に0が含まれ,数値解法上の困難を生じる.本論では,圧力修正量のポアソン方程式を連続の式の変わりに用いることで随伴方程式の係数行列の対角成分が優位となる手法を示した.これより安定かつ高速な求解が可能である.計算結果を有限差分法によるものと比較したところ,圧力勾配の大きな翼前縁付近の形状変化に対してやや感度係数を過小に評価する傾向があるものの,両者はよい一致を示した.今後は本手法の乱流場への適用,また形状最適化への応用を行っていく予定である.