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波浪中における船舶の横揺れを軽減する装置として,アンチローリングタンク(以下ART)が広く用いられてきたが,フィンスタビライザーに比べて性能上の欠点があることから次第に用いられなくなっていた.しかし,最近の痩せ型高速フェリーにおいて,追波中での横揺れが問題となり,抵抗増加を伴うフィンスタビライザーに代わり,再びARTを見直す気運が高まっている.本研究では,これまで検討されていないARTの減揺効果に及ぼす左右揺れの影響を実験的に調査した.ART模型を強制的に,横揺れ,左右揺れ,両揺れの連成運動をさせ,ART内の水の運動を調べ,左右揺れからの影響が大きいことを明らかにした.さらに模型船の波浪中運動実験を実施した結果,設置位置によってARTの効果がほとんど得られないことがあることを確かめ,これには左右揺れが影響していることを示した.