フォーラム現代社会学
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特集Ⅱ 社会調査とデータ・アーカイブ
公開調査データの作成と寄託 : JGSS(日本版総合的社会調査)の経験
岩井 紀子
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2012 年 11 巻 p. 122-131

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抄録

大阪商業大学JGSS研究センターは、「日本社会の現状と変容をとらえる」ことに焦点をあてて、社会科学の多岐にわたる分野の研究者の研究課題を集約して、2000年以降、数千人規模の全国調査を9回実施している。2003年以降は、アメリカのGSSタイプの調査を実施している韓国・台湾・中国のチームと協力して、共通モジュールを作成し、それぞれの全国調査に組み込むEast Asian Social Surveyプロジェクトにも取り組んでいる。2006年以降は、調査は隔年に実施しているが、ひとつの調査の準備段階から、日本語と英語のデータを整えて、国内外のデータアーカイブに寄託するまで、4年以上を要する。そのため、JGSS研究センターは、常に段階の異なる複数の調査に取り組んでいる。本稿では、ひとつの調査の流れを説明して、各段階で要する作業や課題を説明する。「JGSS公開データ」は国内外の大学・研究機関で利用され、利用件数は2012年1月末に2万5千件を超えた。社会学をはじめ、経済学、人口学、統計学、政治学、心理学、教育学、言語学、地理学、公衆衛生学、農学などの分野で活用され、JGSSデータを利用した著作は700を超え、国内外の社会科学の幅広い分野の研究・教育活動に寄与している。本稿では、公募設問や分析研究課題の応募者ならび公開データの利用者に求める研究上の作法についても述べる。JGSSが、大規模公開調査データを今後も提供するためには、研究資金の確保について研究者コミュニティからのサポートが不可欠である。

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© 2012 関西社会学会
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