2013 年 12 巻 p. 56-68
本稿の目的は、グローバル企業の人材育成について分析することであるが、対象とするのはトヨタ自動車の企業内教育活動として会社設立の翌年に設置された企業内訓練校「トヨタ工業学園」である。具体的に注目するのは、トヨタの教育プログラムがトヨタという巨大組織の存立においてどのような役割を果たしているのかという点である。トヨタ工業学園の教育プログラムの有効性は、トヨタのニーズにどれだけ応えられているかと直接結びついている。それは単なる技能を養成するという機能的意味を持つに留まらない、トヨタという企業の組織文化に関わっているのではないか、というのが本稿の基本的視点である。トヨタ工業学園の関係者・OB・現役の学園生、社長を含むトヨタ経営者層へのインタビュー調査によって、トヨタ流の人材育成・教育プログラムがトヨタという組織にとって単に労働力生産の場としてのみ存在しているのか、地域社会においてトヨタの人材育成・教育プログラムがどのように寄与しているのかについて検討する。