2013 年 12 巻 p. 114-120
本稿では、東日本大震災を広域システム災害としてとらえていく。我々の暮らしは様々なライフラインや生産流通の巨大システムとの関係なしに成り立たない状態にある。広域システムはそれが機能している限り、豊かな暮らしと安心/安全な環境を約束する。しかし、いったんそれが壊れると被害は大規模化し、復旧が難しくもなる。それどころか、このシステムの中に含まれる中心-周辺関係が、システム再建の過程で崩壊以前よりも強い形で現れることとなる。広域システムにはインフラや経済的側面だけでなく、家族、行政、政治、メディア、科学といった社会的な局面もある。これらの巨大で複雑なシステムが壊れることで、人間の無力さが現れ、被災地は周辺化した。しかし今回は中心としての東京さえもが無力化した。こうした事態は1995年阪神・淡路大震災の時には見られなかったものである。2011年東日本大震災までに何がおきたのか。その解を、広域システム内での人間とコミュニティのあり方のうちに考えていく。