2016 年 15 巻 p. 3-17
本稿では日常会話の会話分析から、他者開始の修復連鎖において相互行為の参与者がその場での常識的知識を「知らない」ことがどう表され、扱われるかを調べた。とくに本稿では、【名詞(代名詞)+メタ形式(「って」「というのは」「とは」)+疑問詞】の形式をとる修復開始装置に着目し、この形式が、修復開始者が物を「知らない」ことを表すことを論じた。さらに、この形式をとる修復連鎖の実施部を観察した結果、修復実施の際に、様々な付加的要素の配置によって修復開始者が物を「知らない」ことが相互行為の中で焦点化されることをみた。このことから、実際に相互行為の参与者自身が、【名詞(代名詞)+メタ形式(「って」「というのは」「とは」)+疑問詞】の使用を、常識的知識を「知らない」ことを顕在化させるものとして理解していることが確認された。