フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
15 巻
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
論文
  • 平本 毅
    2016 年 15 巻 p. 3-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

    本稿では日常会話の会話分析から、他者開始の修復連鎖において相互行為の参与者がその場での常識的知識を「知らない」ことがどう表され、扱われるかを調べた。とくに本稿では、【名詞(代名詞)+メタ形式(「って」「というのは」「とは」)+疑問詞】の形式をとる修復開始装置に着目し、この形式が、修復開始者が物を「知らない」ことを表すことを論じた。さらに、この形式をとる修復連鎖の実施部を観察した結果、修復実施の際に、様々な付加的要素の配置によって修復開始者が物を「知らない」ことが相互行為の中で焦点化されることをみた。このことから、実際に相互行為の参与者自身が、【名詞(代名詞)+メタ形式(「って」「というのは」「とは」)+疑問詞】の使用を、常識的知識を「知らない」ことを顕在化させるものとして理解していることが確認された。

  • ―長浜曳山祭における若衆たちの資金調達プロセスを手がかりとして―
    武田 俊輔
    2016 年 15 巻 p. 18-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

    本論文は都市祭礼の担い手たちが、祭礼以外の地域社会における職業生活や日常的な暮らしを通じて構築した社会関係資本をいかにして祭礼に活用しているのかについて、滋賀県長浜市の長浜曳山祭を事例として明らかにする。従来の都市祭礼研究では多くの場合、その分析対象は祭礼の本番やその直接の準備と、それを行う祭礼組織の内部における担い手のネットワークに視点を限定している。しかし祭礼を構成する1人1人の担い手はより広範な都市の社会的ネットワークの中に属し、また当の都市祭礼も人的資源においても資金面でも、担い手以外の様々な人々との結びつきを通じて継承できるのであり、そうしたより広範なネットワークが、祭礼にとって持つ意味を分析する必要がある。

    本論文ではその点について、祭礼の執行に不可欠な資源である資金調達のメカニズムを検討することで、祭礼の担い手たちが地域社会において醸成している社会関係と祭礼の関係性を分析する。その結果①祭礼パンフレットへの広告協賛金が個々の担い手の社会関係資本の反映であり、②祭礼における協賛金のやりとりを通じて、日常的な関係性もまた保証されていること、③資金調達だけでなく、同じ町内や他町へのパンフレットというメディアにおける社会関係資本の顕示が重要で、それが担い手への社会的評価と結びついていることを示し、祭礼組織の外部に広がる社会関係資本と祭礼との結びつきについて明らかにした。

  • ―不満の解消機会に注目して―
    吉岡 洋介
    2016 年 15 巻 p. 32-45
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

    近年の労働市場では、不満を理由に勤め先を離れる者が増加しているという。本稿はこの不満離職の増加を、従業員の不満の増加だけでなく、不満でも勤め続ける者の減少として、すなわち不満の解消機会の広がりを意味していると想定する。そのうえで、不満の解消機会は労働市場のいたるところで開かれているのか、それとも労働市場の位置によっては不満でも勤め続ける者が存在するのかを明らかにする。さらに満足でも離職する(せざるをえない)者の存在を明らかにする。

    従来のパネルデータを用いた先行研究は、従業員が仕事に満足であれば勤め続けやすく不満であれば離職しやすい傾向を明らかにしてきた。さらに本稿では、仕事不満度と職業変数との交互作用効果の検討により、意識にかかわらず勤め続ける傾向や離職する傾向にある者の職業的特徴を明らかにする。

    2007年と2008年に行なわれたパネル調査(JLPS)の2次分析の結果、2007年の男性従業員の仕事不満度は翌年までの離職に確かに影響し、満足であれば勤め続け不満であれば離職する傾向がみられた。しかし交互作用効果を検討したところ、好条件の転職機会にめぐまれにくいブルーカラーは不満でも勤め続けやすく、非自発的離職を強いられやすい非正規雇用は意識にかかわらず離職しやすいことがわかった。不満離職が増加したとはいえ、意識と離職の関連の仕方は一様ではなく、労働市場の位置によって条件づけられていることが明らかになった。

  • ―“Prisoner of Love”仮説の検証―
    大久保 将貴
    2016 年 15 巻 p. 46-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、介護労働における就業継続意向の規定要因を明らかにし、さらに、近年ケアワークの理論としてとりあげられる“Prisoner of Love”仮説を検証することである。“Prisoner of Love”仮説とは、入職動機が利他心等の内発的動機に基づく者は、仕事満足度が就業継続意向に与える影響が相対的に小さいという仮説である。上記の点について、介護労働者の大規模個票データを用いて分析を行った結果、以下の3点が明らかとなった。第1に、賃金が就業継続意向に与える効果は仕事満足度を媒介している。第2に、仕事満足度の高さは就業継続意向に正の影響を与えている。第3に、入職動機が内発的動機に基づく労働者は、仕事満足度が就業継続意向に与える正の効果が小さく、“Prisoner of Love”仮説が成立する。

特集 地方から露わになる亀裂と構造的暴力
  • 栗岡 幹英
    2016 年 15 巻 p. 60-62
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー
  • ―沖縄の階層とジェンダー―
    岸  政彦
    2016 年 15 巻 p. 63-78
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

    この論文では、沖縄社会の内部にある様々な亀裂や多様性について考える。

    社会学では、沖縄は、本土の都市と比べて、共同体規範が極めて強い社会として描かれてきた。沖縄社会は、インフォーマルな横のつながりによって構成される、「共同体社会」であると分析されてきた。しかし、本土の他の地域と同じように、沖縄社会の内部にもまた、多様性があり、たくさんの亀裂が存在している。

    現在、私を含めて4名の研究者で共同でおこなっている、「沖縄の階層格差と共同体」に関するフィールドワークを概説する。それは、沖縄社会に存在する階層格差を、質的なフィールドワークから詳細に描くことを目的としている。私たち4名によるフィールドワークの概要を述べ、そこから何が導き出せるかを考える。最後に、亀裂や多様性に注目することで共同性概念を相対化したあと、もういちど日本と沖縄との植民地主義的な関係について考えなければならないことを主張する。

  • ―帰還・自立の阻害要因と構造―
    佐藤 彰彦
    2016 年 15 巻 p. 79-91
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

    本報告は、筆者が他の社会学者とともに、原発事故の影響にともない福島県富岡町から避難している住民らを対象に、2011年秋よりおこなってきた聞き取り調査の結果から、原発事故避難者が置かれている実情を取りまとめたものである。分析の結果から主に次のことが明らかになってきた。1)避難者が抱える問題は極めて広範かつ複雑であること、2)しかしながら、こうした問題が政策の現場では正確に認識されていないこと、3)そのため、現行の政策が必ずしも十分な被災者救済に繋がっていないこと、4)一方で、地域復興に向けた政治的決定が急速に進み、被災者が抱える問題は深刻化の一途を辿っていること、5)その背後には地方自治を取り巻く我が国の法制度と、6)問題の深刻化を後押しする世論の存在を否定できないこと。

    これらは、現行の復興政策が据えている前提(=原地復興と早期帰還)と原発事故避難者が直面している問題(生活再建と長期スパンでの帰還)との間の乖離故に生じており、このままでは現行政策の破綻、あるいは、被災元自治体の消滅すら現実に起こる可能性もある。

  • ―中心-周辺の分断から考える―
    関  嘉寛
    2016 年 15 巻 p. 92-105
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

    本稿は、東日本大震災における被災地・被災者の現状とそれに対する災害ボランティアの関わり方について議論をおこなっている。東日本大震災の被災地は、一義的な中心-周辺という二項対立構造で理解することができない。被害の範囲・被災地の地政学的特性などの空間的側面や、被災経験によるコミュニケーション不全などにより、中心-周辺の分断線は複雑化している。復興において誰/どこが中心で、誰/どこが周辺に追いやられているのかは、立場や場面、状況などに応じて異なってくる。つまり、問題が起因する構造が潜在化してしまい、自分にとって望ましい復興のあり方を見いだすことが難しくなっている。

    このような状況の中で、被災地・被災者は被災によって崩壊した社会的ルーティンを回復させる必要が生じる。なぜならば、被災とは、「今日あることは明日もある」という日常生活を支える自明性の崩壊として経験されるからである。したがって復興とは、この自明性の再創造を意味している。

    外部者であるボランティアが復興に関わるということは、被災地・被災者と一緒にこの自明性を再創造することである。再創造のためには、現象学的社会学でいうところの時間的継続性への信頼を回復する必要がある。さらに、この時間的継続性を回復させるためには、反復可能性の理念化を実現させる必要がある。例えば、ボランティアが「またきますね」という約束を,ちゃんと果たすということは、自己と大切な他者との関係性は儚いものではなく、反復しうるものとして理念化されていき、時間的持続性への信頼を生み出すきっかけとなるのである。

  • ―フクシマとオキナワから考える植民地主義―
    菊地 夏野
    2016 年 15 巻 p. 106-109
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー
  • ―地域社会のドラマ分析―
    早川 洋行
    2016 年 15 巻 p. 110-115
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー
書評
追悼
編集後記
feedback
Top