2020 年 19 巻 p. 48-59
持続的な文系縮小圧力があるなか、社会科学の学問を「科学的」かどうかによって優劣判断するような言説が目立つようになっている。このような圧力を受けて、社会学の立ち位置をどのように考えたらいいのかについて考察するのが本稿の目的である。経済学のように科学に近似していくという戦略、科学概念を拡張してそのなかに社会学を入れるという戦略、「科学」とそうでない学問との境界線の揺らぎを指摘してそもそもの判断基準を相対化するといった戦略などがあるが、いずれも有効性に限界がある。社会学の独自性が狭い意味での科学とは異なるところにあるのなら、その立ち位置を外に向かって丁寧に説明することを続ける必要がある。