フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
論文
職能団体による専門職化という戦略は適切であるのか
―認定看護師に対する質的調査からの一考察―
中田 明子
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2022 年 21 巻 p. 16-29

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抄録

半専門職は職能団体が中心となって、業務条件の改善のために専門職化を目指してきた。本稿では、代表的な半専門職の看護師を検討の対象に取り上げ、現場での調査を基に、職能団体の戦略が適切であるか検討した。四半世紀の間に専門看護師・認定看護師・特定行為研修制度が設立された。日本看護協会は3つの教育制度において、コストに関しては受講者が負担すべきと考え、教育内容に関しては、専門看護師・認定看護師制度には専門分化、特定行為研修制度には自律性という特徴を持たせた。また高度な知識を持った看護師の誕生に伴い、現場で担ってきた多様な業務に関しては、看護助手を雇うという業務の階層化を求めてきた。訪問看護ステーションに所属する認定看護師28人に行った質的調査の結果は、以下になる。調査対象者は第1に、自律性を高める特定行為研修の受講に消極的で、業務の階層化も志向せず、資格の保持にも固執していない。第2に、資格取得による経済的なメリットは少ないため、自己の知識の向上を目的としていたが、指導者となる教育を受け、現場で指導的役割を果たすようになっている。職能団体の意図とは異なり、現場の認定看護師は専門職化を志向していないため、半専門職は専門職化という迂回をせずに、業務条件の改善を求める必要がある。しかし日本の看護師の歴史では質より量の育成が優先されてきたため、組織全体の質を向上させる制度ができたことの意義は大きい。

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© 2022 関西社会学会
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