2022 年 21 巻 p. 3-15
日本におけるHIV・AIDSをめぐる報道は、1980年代にはじまり、その後、1987年の「エイズパニック」、1996年の薬害エイズ裁判和解判決などで盛り上がりを見せたと考えられてきた。しかし、HIV・AIDSに関連する新聞記事数を確認すると、上記の出来事のほかに、1992年にも報道数の大きな増加があることが確認できる。しかし、1992年においては、HIV・AIDSに関する目立った出来事は生じていない。
本稿では、この1992年とその前後の報道の見出しを対象に、KH Coderを用いた分析を行い、この時期に主にどのようなトピックが報じられていたのか、明らかにすることを試みる。まず、1990年代前半のデータについて各年を外部変数とし、対応分析と共起ネットワーク分析によって各年に特徴的なトピックを明らかにした。次に、1992年のみのデータを対象に共起ネットワーク分析を行い、つながりの強い語をトピックとしてまとめることを試みた。最後に、分析結果を1992年当時について記述した文献と照合し、KH Coderでの分析結果との相違について確認を行った。